営業方針を具体的に作り込む

2週間前の当コラム84号では、どういう視点から営業方針を作ればよいか、その視点の一覧表を用いてご紹介しました(その一覧表を再掲します)。今号ではその1つ1つの視点、ここでは「1.市場・顧客開拓」を例にとって、どのように営業方針を具体的に作り込んでいくかについてお話しします。

84.2.営業方針策定の視点

営業方針は、大事な部分をもれなくおさえることが大切です。「市場・顧客」を大きく分けると、自社がすでに取引をしている既存市場(既存客)と、まだ取引がない新規市場(新規客)の2つから構成されます。ですから「既存市場の深耕」「新規市場の開拓」それぞれで営業方針を作成します。

既存市場の深耕でいうと、どの会社も複数社から購買していることが多いので、他社に発注している分を取り込むことによってシェアアップが見込めます。具体的な営業行動としては、或る部門へ1つの部品を納入しているのなら別の部品を見積りさせて頂く、隣りの部門を紹介してもらって新たな引き合いを受領する。こういうふうにして既存客のシェアアップができます。これを営業方針に書くと「既存納入先から別案件の紹介を獲得する」となります。

自社の営業部署が、地域別に東日本営業部と西日本営業部で、または顧客の業種別に営業一部、営業二部で構成されていれば、営業方針も部署別の営業方針へブレイクダウンして展開します。
【営業方針(既存市場の深耕)の各営業部署への展開例】
営業本部「既存納入先から別案件の紹介を獲得する」
 東日本営業部「(当社機能が差別化できている)食品工場から別案件の紹介を獲得する、年間10件」
 西日本営業部「(自社を評価して頂けている)納入量が増加傾向の既存客から別案件の紹介を獲得する、年間15件」

営業本部の営業方針を傘下の部署へ展開しやすいことが、良い営業方針の作り方のコツです。先ほどの例では東日本営業部が「食品工場」、西日本営業部が「納入量が増加傾向の既存客」と視点が異なっています。無理に統一せずに、各部署の営業リーダーに考えさせて、自分たちで方針設定してもらうことが大事です。人は誰でも、自分が作った方針なら必ず達成しようと頑張るからです。

つぎに新規市場の開拓です。これは難易度が高い施策なので、だからこそ具体的な営業方針に落とし込まないと、後回しになりがちです。新規顧客を大きく分けると(分け方のモノサシはいろいろあります)、複数社購買客と特定社牙城客の2つがあります。前者は、機能・価格本位で選ぶので結果として複数社から購買する客、後者は、社長どうしが仲が良くて長い付き合いが続く、資本関係がある、以前に恩になった等の理由から、特定社からしか買わない客です。当然ですが、より攻略しやすいのは前者ですから、次のような営業方針に展開します。
【営業方針(新規市場の開拓)の各営業部署への展開例】
営業本部「複数社購買社へ新規訪問を続けて見積提示する」
 営業一部「(サービス体制に不満を持つ)競合A社の納入先へ当社の技術サービス対応について提案、年間5社」
 営業二部「(リース期間がまもなく終了する)納入から5年が経過する企業へ当社戦略商品の提案、年間10社」

新規客に営業員が個別訪問しても、人間関係ができていないので受付で撃退されるなど、面談に持ち込むことさえ難易度が高いことが一般的です。そこで営業員による訪問以外のやり方として「5. 販促・広報宣伝」施策が重要になります。展示会やセミナーの開催を通じて新規客の来場を促進したり、入替キャンペーンを代理店と共同で企画するなど、営業行動を考えていきましょう。

ここまで作るとお分かりだと思いますが、それぞれの営業方針が相互に関係してきます。展開例で紹介した内容を含めて、営業方針間の連携を図示すると、次のようになります。

86.営業方針策定の視点_方針間の連携

【関連記事1】
次にご紹介する記事も「営業方針」でグーグル検索すると上位表示される当ブログ記事です。
会社の経営戦略をどのように営業方針に展開していくか、事例を添えてご紹介しています。
会社の営業方針を部下に理解させる(ブログ13号)

【関連記事2】
当ブログ、関連記事1をお読みになって、営業方針の内容をご理解いただけたら、次はご自分で営業方針を策定してみましょう。
「営業方針のつくり方・使い方」ページには、これまでにお読みになった、経営戦略から営業方針への展開方法、営業方針を策定する7つの視点に加えて、営業方針が完成した後に行動に移すための達成基準など、営業方針の作成から運用に至る内容を網羅しています。さらに、約20分の説明動画も用意しておりますので、ぜひご覧ください。
営業方針のつくり方・使い方

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