大企業が避ける「面倒な市場」にこそ、中小企業の勝ち筋がある
中小企業が大企業と同じ土俵で戦えば、価格競争になりやすい。
しかし、大企業が嫌がる「面倒な市場」には、中小企業が価格競争を避けながら差別化できる領域があります。
大企業が避ける「面倒な市場」とは
1.多品種少量で効率が悪い
2.個別対応が必要で標準化しにくい
3.現場判断が必要でマニュアル化しにくい
筆者は「人を大切にする経営学会」に3年前に入会して、人を大切にする経営を実践する企業経営者のご講話から学んでおります。社名は伏せてA社と言いますが、社員に対する経営者の深い愛情、「会社に大切にされている」と感じる社員による前向きな対応力、会社による負荷軽減のための先行投資、の3つを実践して、「面倒な市場」でトップシェアを獲得した企業の事例をご紹介します。
個別対応を仕組み化によって効率化する
前述の「2.個別対応が必要で標準化しにくい」市場を掘り下げていきます。個別対応が必要な商品の受注形態として、下表のように標準品、オプション・カスタマイズ、特注という3つのタイプがあります。数百万円以上する高価な産業機械では、一般的な考え方です。
表の下に行くほど手間と経費が掛かります。高額な機械であれば追加費用を載せやすいのですが、A社は数千円にとどまる身の回りの商品で実現なさったことが画期的です。なぜ、それが実現できて、その市場を拡大できたのでしょうか。こうした個別対応を効率化するには、現場社員の知識や経験を蓄積し、仕組みに落とし込むことが重要になります。
「面倒な市場」では価格競争になりにくい
同社の強さの根底には、「人を大切にする経営」があります。社員やその家族をとても大切にしておられます。一例をあげると、社員の7割が女性で、利用者の立場に立った育児休業制度や有給休暇制度によって、産休育休後の社員の職場復帰がほぼ100%だそうです。
また、経営者が社員の働きをよく観察しておられ、経営者が社員を直接褒めておられます。弊社が支援するお客様企業を見ても、社員を叱ることはあっても、褒めることはなかなかなさってないようにお見受けします。
個別対応では、営業・設計・製造の現場判断が重要になりますし、現場から見れば非常に手間がかかる仕事です。しかし、社員自身が「会社から大切にされている」と感じているからこそ、顧客に対して同じことをしようと心がけ、面倒な要望にも前向きに向き合えるのではないでしょうか。
とはいえ、手間がかかる個別対応を現場に任せていたら、いずれ現場が疲弊します。これでは「人を大切にする経営」とは言えません。そこで同社は、次のような負荷軽減策の先行投資に取り組むことで、最初は特注に近かった手間を、標準品に近い手間に軽減しておられます。
・物流センターをつくり、効率的な出荷方法を構築する
・物流センターの運営を専門業者に業務移管する
・パーツオーダーシステムを開発して、受注処理の負荷を軽減する
中小企業の差別化は「現場対応力」
個別対応を必要とする市場は、一見すると非効率です。
しかし、参入障壁が高く、価格だけでは比較されにくいため、対応力や提案力を持つ企業は価格競争に巻き込まれにくくなります。個別対応が必要な市場では、現場社員の判断力や顧客理解が競争力になるのです。
さて、これを読んでおられる読者の会社にも、そのような市場があると思います。そこにどう向き合っておられるでしょうか。
本コラムでは以下3つを組み合わせて、自社が勝てる「面倒な市場」に取り組むことをご紹介しました。
・社員に対する経営者の深い愛情
・「会社に大切にされている」と感じる社員による前向きな対応力
・会社による負荷軽減のための先行投資
「人」が差別化要因になります。「人を大切にする経営」を実践して、社員が幸せになり、顧客が喜び、結果として会社の競争力につながっていく。大企業と同じ土俵で戦うのではなく、大企業が嫌がる市場で強みを磨く。そこに、中小企業の成長余地があるのではないでしょうか。








