営業方針のつくり方・使い方

会社の経営戦略を自部門の営業方針へ展開する

会社の経営戦略を元に自部門の「営業方針」を作成します。部門の売上高・粗利、台数やシェアなど定量的な目標はもちろん、ターゲット市場、顧客開拓、販促や広報宣伝など定性的な目標を具体化していきます。営業方針は期初に全員に説明・共有して徹底することが大事です。ここでは、営業方針とは何か、どうやって作るか、そしてどのように営業担当者に徹底して実行していくのか、徹底解説します。

営業方針を実行に移す際にもっとも大事なことは、会社の営業方針を部下に理解させることです。営業担当者はついつい価格を下げたがります。営業スキルやノウハウが乏しい担当者ほど、価格を下げて目先の注文を取ろうと焦ります。それが一番楽な交渉方法だからです。しかし、仮に会社が付加価値が高い機械を売って利益率を高めていく戦略を立てていたとすると、戦略と実際の営業行動が矛盾します。貴社でそんな矛盾はありませんか。「会社の戦略は部下に口酸っぱく説明しているよ」という上司が多いのですが、営業担当者は上司から聞かされる情報を深く理解しているわけではありません。ましてや営業担当者の評価基準が売上高や売上個数であれば、価格を下げてでも売ろうとします。

会社の経営戦略は「(5年後の)20××年に売上高○○を達成する」や「自社強みが発揮できる新市場の開拓」のように、会社全体を俯瞰して中長期的な旗印を掲げることがあります。ともすれば、一担当者にとってはいま何をやるか具体的にイメージできないケースが出てきます。そこで、会社の経営戦略を自部門の営業方針に翻訳し直して営業担当者が理解することが大事です。経営戦略と営業方針の違いについて、下図のように考えてみましょう。

13.営戦略と営業方針

部門売上高や部門粗利、台数やシェアなど定量的な項目はもちろん、ターゲット市場、顧客開拓、販促や広報宣伝など定性的な項目も営業方針の中で具体化していきます。そうすることで、経営戦略の「自社強みが発揮できる新市場」を、営業方針として「高精度、高耐久性が評価される医療・介護機器市場」に明確化することで、医療・介護機器市場のターゲットリストを作成して、●件のランク2案件、●件の成約というように、目指すべき目標が明確になります。トップダウンで方針を下ろすだけでなく、課内ミーティングを開いて、自分たちで具体化させるボトムアップ手法を採り入れることで、より具現化できます。人によって理解度は違います。まず、しっかり営業方針を共有して徹底することが大事です。

営業方針を策定する視点を決める

ここまでの説明で営業方針の内容を理解していただけたと思いますが、いざ自分で営業方針を作成しようとすると、「営業方針ではどんなことに触れたらいい?」「一番力を入れている新規開拓を深堀りすればよいのかな」などと悩まれる方が多いようです。そこで、営業方針を策定するにあたっての視点、つまり営業部として設定すべき方針の項目を下表に示します。

84.2.営業方針策定の視点

「これ全部作るの?」と驚かれる方もおられるでしょう。ご安心ください。全てを網羅する必要はありません。これは雛型ですので、貴社に必要な視点を選んで、営業方針を策定していきましょう。アドバイスが欲しい方は、右上の「お問い合わせ」ボタンからお気軽にご相談ください。

営業方針を具体化・細分化する

ここからは、営業方針を実際に作成するマネージャーの方向けに、営業方針のつくり方を詳細に解説していきます。当面作成する予定がない方は、ここを読み飛ばして、最後に営業方針のつくり方をわかりやすく解説するセミナー動画を用意しましたので、ぜひご覧ください。

営業方針は、大事な部分をもれなくおさえることが大切です。「市場・顧客」を大きく分けると、自社がすでに取引をしている既存市場(既存客)と、まだ取引がない新規市場(新規客)の2つから構成されます。ですから「既存市場の深耕」「新規市場の開拓」それぞれで営業方針を作成します。

既存市場の深耕でいうと、どの会社も複数社から購買していることが多いので、他社に発注している分を取り込むことによってシェアアップが見込めます。具体的な営業行動としては、或る部門へ1つの部品を納入しているのなら別の部品を見積りさせて頂く、隣りの部門を紹介してもらって新たな引き合いを受領する。こういうふうにして既存客のシェアアップができます。これを営業方針に書くと「既存納入先から別案件の紹介を獲得する」となります。

自社の営業部署が、地域別に東日本営業部と西日本営業部で、または顧客の業種別に営業一部、営業二部で構成されていれば、営業方針も部署別の営業方針へブレイクダウンして展開します。
【営業方針(既存市場の深耕)の各営業部署への展開例】
営業本部「既存納入先から別案件の紹介を獲得する」
 東日本営業部「(当社機能が差別化できている)食品工場から別案件の紹介を獲得する、年間10件」
 西日本営業部「(自社を評価して頂けている)納入量が増加傾向の既存客から別案件の紹介を獲得する、年間15件」

営業本部の営業方針を傘下の部署へ展開しやすいことが、良い営業方針の作り方のコツです。先ほどの例では東日本営業部が「食品工場」、西日本営業部が「納入量が増加傾向の既存客」と視点が異なっています。無理に統一せずに、各部署の営業リーダーに考えさせて、自分たちで方針設定してもらうことが大事です。人は誰でも、自分が作った方針なら必ず達成しようと頑張るからです。

つぎに新規市場の開拓です。これは難易度が高い施策なので、だからこそ具体的な営業方針に落とし込まないと、後回しになりがちです。新規顧客を大きく分けると(分け方のモノサシはいろいろあります)、複数社購買客と特定社牙城客の2つがあります。前者は、機能・価格本位で選ぶので結果として複数社から購買する客、後者は、社長どうしが仲が良くて長い付き合いが続く、資本関係がある、以前に恩になった等の理由から、特定社からしか買わない客です。当然ですが、より攻略しやすいのは前者ですから、次のような営業方針に展開します。
【営業方針(新規市場の開拓)の各営業部署への展開例】
営業本部「複数社購買社へ新規訪問を続けて見積提示する」
 営業一部「(サービス体制に不満を持つ)競合A社の納入先へ当社の技術サービス対応について提案、年間5社」
 営業二部「(リース期間がまもなく終了する)納入から5年が経過する企業へ当社戦略商品の提案、年間10社」

新規客に営業担当者が個別訪問しても、人間関係ができていないので受付で撃退されるなど、面談に持ち込むことさえ難易度が高いことが一般的です。そこで営業担当者による訪問以外のやり方として「5. 販促・広報宣伝」施策が重要になります。展示会やセミナーの開催を通じて新規客の来場を促進したり、入替キャンペーンを代理店と共同で企画するなど、営業行動を考えていきましょう。

ここまで作るとお分かりだと思いますが、それぞれの営業方針が相互に関係してきます。展開例で紹介した内容を含めて、営業方針間の連携を図示すると、次のようになります。

86.営業方針策定の視点_方針間の連携

営業方針を行動に移すために達成基準をつくる

営業方針は、部員全員に共有させるだけにとどめず、営業担当者が行動に移していくことが大切です。おさらいになりますが、ここでいう営業方針とは、会社の経営戦略に沿って、自らの営業部の戦略として目標や計画に展開したものです。売上・利益、販売台数・シェアなど定量目標(計画・予算)と、商品、顧客、販促や広報宣伝など定性的な目標(施策)の両方があります。

良い営業方針は、その期が終わった段階で達成できたかどうかが明確に分かります。「高精度、高耐久性が評価される医療・介護機器市場の顧客開拓」を例にとると、その期が終わった段階で「達成した」「未達成に終わった」と評価するためのモノサシ、つまり達成基準を事前に設定します。達成基準は納期と水準から成り立ちますから「期末の来年3月31日時点で2件受注する」となります。

「今期の達成基準は医療・介護機器市場で2件受注する」ことだ、と営業員に伝えたら、期初の4月の営業行動が変わるでしょうか。残念ながら空回りするだけです。1回の商談で「いきなり受注する」ことは稀なので、受注に至る営業プロセスごとに達成基準を設定して営業員に指示しないといけません。ターゲットリストを作成して、初回訪問、提案・プレゼンテーション、見積提示、受注へ営業プロセスが進みますから、下図の通り、第1四半期、第2四半期、第3四半期、第4四半期と順を追って達成基準をつくっていきます。

65.営業方針を目標と達成基準へ展開

セミナー動画「新任マネージャーの営業方針のつくり方/概要編」

ここまでご紹介した内容を中心に、営業方針のつくり方をわかりやすく徹底解説するセミナー動画を用意しました。部下からは「営業方針を示してもらわないと、新規開拓ターゲットリストの選定ができません!」、上司である営業部長からは「来期の計画を立てるにあたって、骨格となる営業方針を決める会議を開こう」など、マネージャーが営業方針の重要性を痛感する場面は山ほどあります。その場面を打開できるヒントが、わずか20分のご視聴で得られる内容です。

「新任マネージャーの営業方針のつくり方/概要編」時間 18分24秒
主な内容:
 1) 営業方針とは
 2) マネージャーが営業方針の重要性を痛感する場面
 3) 経営層と現場をつなぐ結節点としてのマネージャーの役割
 4) 経営戦略と営業方針の違い
 5) 営業方針の具体例
 6) 貴部署の営業方針充実度を見える化しよう

【関連記事】
貴社では短期の営業方針、中長期の営業方針が営業担当者にどれくらい浸透できているでしょうか。それを見える化(可視化)するのが、営業力診断アンケートです。営業力や営業課題を見える化して、対策を講じていきましょう。
営業力診断アンケート

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