営業方針

営業方針を策定する視点

コロナ禍で対面営業が敬遠される中、特に新規顧客開拓営業に苦労している企業が多いと思われます。残念ながら今後しばらくはこの状況が続きそうなので、対面営業に基づいた「従来型営業方針」から、コロナ禍で一気に進んだオンライン営業やデジタルマーケティングを採り入れた「New Normalな営業方針」へ早く転換していくことが望まれます。

いざ営業方針を見直そうと決心しても、「スローガンと営業方針はどう違うのか?」「営業方針ではどんなことに触れたらいい?」「一番力を入れている新規開拓を深堀りすればよいのかな」などと悩まれる方が多いようです。そこで、営業方針を策定するにあたっての視点を下表に示します。

84.2.営業方針策定の視点

1つめの「市場・顧客開拓」の視点では、既存市場と新規市場に分けて方針を設定したり、地域別(東日本、西日本など)やチャネル別(代理店との協業策)の方針も欠かせません。「市場・顧客開拓」と一括りにするのでなく、市場を細分化してそれぞれに対して最適な方針を打ち出さないと、成果が得られません。

続いて、2.案件づくり、3.案件クロージングのように、営業プロセス別に施策を構築します。例えば「案件が出てきた後のクロージングは得意だけど、最初の見込案件づくりに苦労している」企業であれば、案件づくり施策の強化が不可欠です。その場合は下記のように具体化しましょう。

2. 案件づくり施策
【ターゲットリストの設定】
  過去の展示会・セミナー来場客をターゲットリストにまとめて再訪問する
【訪問件数増加の取り組み】
  毎月50件訪問する(現在が毎月40件訪問ペースの場合)
【オンライン営業・デジタルマーケティングの活用】
  ウェビナーを月4回開催して、事後にオンライン相談会を実施する

続いて、4.商品政策、5.販促・広報宣伝、6.アフターセールスサービスなど機能別に展開していきます。忘れてならないのは、7.組織・人材育成です。特に若手の能力アップ策は組織の営業力を底上げしますし、若手の頑張りに刺激を受けた中堅社員が奮起しますので非常に重要な施策です。

「これ全部作るの?」と驚かれる方もおられるでしょう。ご安心ください。全てを網羅する必要はありません。これは雛型ですので、貴社に必要な視点を選んで、営業方針を策定していきましょう。

会社の営業方針を部下に理解させる

営業方針を実行に移す際にもっとも大事なことは、会社の営業方針を部下に理解させることです。営業担当者はついつい価格を下げたがります。営業スキルやノウハウが乏しい担当者ほど、価格を下げて目先の注文を取ろうと焦ります。それが一番楽な交渉方法だからです。しかし、仮に会社が利益率低下に悩んでいて、新しい顧客を開拓して付加価値が高い機械を売って利益率を高めていく戦略を立てていたとすると、戦略と実際の営業行動が矛盾します。御社でそんな矛盾はありませんか。「会社の戦略は部下に口酸っぱく説明しているよ」という上司が多いのですが、営業担当者は上司に聞かされる情報を深く理解しているわけではありません。

会社の経営戦略は「(5年後の)20××年に売上高○○を達成する」や「●●分野で新規事業を興す」のように中長期的な旗印を掲げることがあります。ともすれば、一営業マンにとってはいま何をやるか具体的にイメージできないケースが出てきます。そこで、会社の経営戦略を自部門の営業方針に翻訳し直して営業担当者が理解することが大事です。下図のように考えてみましょう。

13.営戦略と営業方針

部門売上高や粗利などの金額面、台数やシェアなど市場面の定量的な計画はもちろん、商品、顧客、販促や広報宣伝などを定性的な計画を織り込んでいきます。そうすることで、○○新商品のセールスポイントを頭に入れて○○業界に提案し、●件の引き合い、○件の見積提示、●件の受注を目指そうと、目指すべき目標が明確になります。トップダウンで方針を下ろすだけでなく、課内ミーティングを開いて、自分たちで具体化させるボトムアップ手法を採り入れることで、より具現化できます。人によって理解度は違います。まず、しっかり営業方針を共有して徹底することが大事です。

営業方針を行動に移すために達成基準をつくる

営業方針を部員全員に共有させるだけにとどめず、方針を具体化させて営業員が行動に移していくことが大切です。おさらいになりますが、ここでいう営業方針とは、会社の経営戦略に沿って、自らの営業部の戦略として目標や計画に展開したものです。商品、顧客、販促や広報宣伝など定性的な目標(施策)と、売上・利益、販売台数・シェアなど定量目標(計画・予算)の両方があります。

「高精度、高耐久性が評価される医療・介護機器市場の顧客開拓」という営業方針を例にとって、話を進めていきます。当然のことですが、その期が終わった段階で「達成した」「未達成に終わった」という結果で評価する必要があり、そのモノサシ、つまり達成基準を事前に設定しておきます。今期末である来年3月31日時点の達成基準として、2件受注することを掲げました。「今期の達成基準は医療・介護機器市場で2件受注する」ことだ、と営業員に伝えたら、営業員の今月の営業行動が変わるでしょうか。残念ながら空回りするだけです。

営業員の行動に言葉を翻訳して指示しないといけません。受注する前に見積提示があり、さらにその手前に提案・プレゼンテーション、情報提供のための訪問が必要となります。つまり、この施策をスタートさせるためには、まず訪問するためのターゲットリスト作成が欠かせません。下図の通り、第1四半期、第2四半期、第3四半期、第4四半期と順を追ってプロセスが進む達成基準づくりが重要となります。

65.営業方針を目標と達成基準へ展開

営業プロセスの達成基準の立て方にコツがある

達成基準の立て方にはコツがあります。例えば、チラシをひたすら配りまくり、チラシに興味を持たれたお客様に対して、カタログやサンプルを使って情報提供や採用を働きかける新規開拓をしている営業の業態を例にとります。この会社の場合、下図の売上UPピラミッドのように、一番下の「情報提供」から頂点の「受注」まで6段階の営業プロセスがあります。営業マンそれぞれの解釈が違ったら、営業行動が異なりますし、お客様にとっていただきたい行動、つまり「達成基準」のモノサシも千差万別になってきます。

包装材料店の売上UPピラミッド例

そこで、③のカタログ提案プロセスであれば、達成基準のモノサシを「カタログを使って商品を紹介した件数」と設定します。営業マンがAさん、Bさん、Cさんと3名いた場合、今日はAさんがカタログ提案プロセスの訪問が5件あったとしても、お客様の都合などでカタログ提案に至らない訪問が出てきますので、5件訪問したうちカタログ提案は2件という結果になります。達成基準のモノサシを共通化することで、営業マンに成果を申告させると、Bさんは4件、Cさんは1件、3名合わせて7件というふうに計算できるようになります。会社としては「今月のカタログ提案件数120件」という達成基準をしていれば、今日は7件となるわけです。
期初の4月であれば、一番下の情報提供プロセスが多いので「チラシ配布件数●件」がふさわしいし、夏頃になれば進展している商談が増えているはずですから「サンプル紹介件数」「カタログ説明件数」が達成基準になります。

秋になれば見積提示が多いでしょうが、案件のクロージングばかりやっていると、刈り取った後にめぼしい案件がなくなってしまいます。並行して一番下の情報提供にも力を注ぐなど、バランスの良い営業活動が、安定した営業成績に欠かせません。できる営業マネジャーはそのさじ加減が実に素晴らしいのです。

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営業力診断アンケート

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