値上げの申入れに対して顧客から言われる言葉

値上げ交渉事例から見えてくること

原材料価格、エネルギー価格や人件費などあらゆるコストが高騰して、各社が値上げを進めています。その中で、値上げ交渉したら断られた、値上げ額を削られたなど、値上げ交渉に失敗した中小製造業が多く見られます。そこで当研究会では、値上げ交渉の実際の事例を集めて、成功確率が高い値上げ交渉について研究を行っています。

集めた事例企業は、自社で製造するメーカー、製造を外部委託するファブレスメーカー、卸売業者などさまざまです。いくつかの質問を用意したのですが、その一つが「値上げの申入れに対して顧客から言われた言葉」です。いろいろな反応があるのですが、代表的な3つをご紹介します。

「値上げの根拠となるデータや資料を提示してください」
「値上げの適用時期を遅らせられませんか?」
「購入数量を増やしますから値上げ幅を抑えられませんか?」

顧客(購買担当者)はサプライヤーとの価格交渉を有利に進めるために、このような厳しい言葉を使うのですが、実はもう1つの目的があります。顧客社内の関係者を納得させるためです。

購買担当者は、社内関係者とサプライヤーとの板挟み

自分が担当する資材の値上げが申し入れられると、上司である購買課長、その資材を使う製造部、その資材を使って設計する技術部など社内関係者に説明して納得してもらわないといけません。購買課長は「購買価格を上げたくない」し、製造部は「製造原価を抑えたい」ので、顧客(購買担当者)は、社内関係者とサプライヤーとの板挟みになるわけです。

社内関係者は購買担当者に対して「値上げの根拠は確かなのか」「値上げの時期を遅らせられないのか」「値上げ幅を抑えられないのか」と質問してきます。購買担当者は、それに応酬するためのデータや知識を備えなければなりません。そして「それを準備するのが値上げ交渉をする営業員の役割」と言っても過言ではありません。

値上げ交渉で営業員は、目の前にいる顧客(購買担当者)を説得するだけでは足りません。顧客(購買担当者)が社内関係者に説明しやすいように、説得力のあるデータや理由を用意することが欠かせません。そのためには、想定される顧客の反応を出来るだけ多く考え出して、それに対する応酬話法と資料を準備しましょう。

値上げの申入れに対して顧客から言われた言葉

「値上げの申入れに対して顧客から言われた言葉」にはいろいろあります。今回集めた事例から、一部をご紹介します。

・値上げの根拠となるデータや資料を提示してください。
・(購買担当者の)上司に説明するために、値上げの内容を分解して欲しい。
・原材料の値上がりはどのような理由によるものですか。
・原材料の値上がりを売り手はそのまま受け入れるのか。
・(売り手の)自社努力はないのか。

・値上げの幅が大き過ぎます。 もっと抑えてください。
・購入数量を増やすので、値上げ幅を抑えられませんか。
・購入数量を増やすので、値上げしないでほしい。

・値上げの適用時期を遅らせられませんか。
・他のサプライヤーから値上げを要請されていない。
・他のサプライヤーからの値上げ見積りが揃っていない。
・予算が取れていないので決算時期まで先延ばしして欲しい。

・原材料価格が下がったら、値下げしてください。
・円高に振れたら、値下げしてください。等々

これらをチェックリストに見立てて、自社のケースではどれが言われそうか考えて、それに対するデータや応酬話法を準備しましょう。この手順を踏むことで、値上げ交渉の成功確率が高まります。

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