ロープレで価格交渉力を高める

弊社が継続支援している卸売業のA社では、商談件数のおよそ8割が価格交渉と納期交渉で占められているそうです。読者の皆様の会社でも多いのではないでしょうか。

原材料やエネルギーの価格高騰にともなって、メーカーからA社に対して値上げ要請が届き、A社が顧客に対して値上げをお願いします。採算が悪化する顧客からは、案件ごとに値上げした価格を下げて欲しいと要求されて、価格交渉になります。

同様に、全世界的なサプライチェーンの問題により納期遅れが日常茶飯事になりました。顧客から「□週間で納品してもらわないと困る」と厳しく言われて、納期遅延による悪影響を最小化するための納期交渉が始まります。このように、メーカーと顧客の間にはさまれた卸売業者は、値上げと納期遅延によって、とても苦労しています。

若手からベテランまで営業員にとって状況は同じなのですが、ベテランは豊富な知識と経験からいくつも対応方法を探せます。一方、経験が浅い若手は「5%値下げしてほしい」と顧客から強く言われると右往左往するばかりです。

そこで、若手営業員が自信をもって商談に臨めるように、価格交渉と納期交渉のロールプレイング(ロープレ)研修を行うことになりました。営業役、顧客役に加えて、オブザーバー役を用意した3人制ロールプレイング、名付けてトライアングル・ロープレです。
トライアングル・ロープレ

ロープレのやり方には工夫があります。顧客が置かれた状況を詳しく商談設定表にまとめておき、顧客役はしっかり読み込みます。営業役には商談設定表の内容を知らせずに、顧客から若手営業員に対して「5%値下げしてほしい」というきつい一言から、価格交渉ロープレが始まります。オブサーバー役には、価格交渉で押さえるべきポイントをまとめたロープレチェック表を渡します。岡目八目といいますが、当事者の立場を離れて第三者として客観的に商談を眺めてみると、新たな気付きを得られます。

価格交渉ロープレを実際に行ってみると、「5%値下げしてほしい」に対して、若手営業員は1つか2つの質問(応酬話法)ができれば良い方で、多くは「会社に戻って検討します」で終わってしまいました。経験不足の若手営業員は適切な回答ができず、自分の力不足を痛感してしまいます。

実は、価格交渉における顧客に対する質問項目(応酬話法)は決まっています。その回答を得たら当方も対応策を練れる「質問の型」があります。これが弊社のノウハウなのですが、その一部をご紹介します。
価格交渉ロープレでの応酬話法

例えば、1つめの質問によって他社の見積取得状況を知ることで、5%という値下げ要望の根拠がわかりますし、顧客が競合他社に発注する可能性を探ることができます。できる営業員は臆せずに質問するのですが、経験が浅いと「こんなこと訊いていいのかな」と悩んでしまいます。この質問ができるのはこのタイミングだけです。後から電話で訊いても決して教えてもらえません。

この「質問の型」は業界や取扱商品によって変わります。弊社が例をお見せしてから顧客企業と弊社が事前に協議してまとめます。ロープレ後の講義で説明して、営業員に覚えてもらいます。先輩が顧客役になって、若手営業員と一緒にロープレをやれば格好の教育になりますし、先輩も自らの経験に沿ってアドバイスできます。新人教育と営業成果を両立できる即効性の高いトレーニング手法です。

ロープレには、それ以外の用途もあります。新商品を説明するロープレは展示会の前に行うと効果的ですし、キャンペーン商品を成約するためのロープレはキャンペーン事前勉強会で実施すべきです。結果として、若手営業員の商談成功率が高まり、若手の戦力化により、上司も楽になります。いいことづくめです。

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