こうすれば成功する値上げ交渉術

値上げ交渉の進め方

現在、多くの中小製造業が、原材料価格や人件費の上昇という厳しい経済環境に直面しています。これにともない、商品やサービスの値上げが避けられない課題になっているにもかかわらず、多くの経営者が値上げ交渉を実施できていません。

また、値上げ交渉したけれども、値上げを断られた、値上げ額を削られたなど、値上げ交渉に失敗した中小製造業も多く見られます。デフレ環境下での長年の経験不足や、顧客からの反発を恐れる心理が、これらの困難を引き起こしています。このような状況を克服するために、当研究会では「成功する値上げ交渉」のためのツールの提供や個別相談会(無料)をご用意しています。

値上げ交渉は次のようなプロセスで進めていきます。値上げ交渉の進め方を正しく理解した上で、入念に準備をした上で値上げ交渉に臨みましょう。


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値上げ交渉事例集 第1号
(食品加工メーカー、段ボールメーカー)



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1.価格戦略の決定

お客様の立場から見ると、サプライヤーによる値上げによって自社の原価が上がりますから、そのまま受け入れるわけにはいきません。値上げによって、お客様が別のサプライヤーに切り替えるなど、値上げには継続受注を失うリスクがつきまといます。

そこで、メイン顧客から値上げ交渉をするのでなく、取引額が大きくない顧客から始めましょう。値上げ交渉に慣れて交渉ノウハウがたまったら、メイン顧客に対して値上げ交渉に臨む順序にすることで、値上げのリスクを軽減できます。

また、自社が先頭を切って値上げ交渉を実施するのは避けた方が無難です。他社が値上げ交渉を実施した後の方が、値上げが受け入れられやすくなります。また、いきなり値上げを申し入れるのでなく、原材料価格の上昇について日頃から説明しておくことで、値上げ交渉に入りやすくなります。

このように総合的に検討して、どの顧客から、どのタイミングで値上げ交渉していくのか、最初に価格戦略を決めましょう。

2. 原価分析

「現在の採算状況では価格を維持できないのでしょうか」「どのくらいの値上げ幅が必要でしょうか」
その答えを得るために、原価分析から始めます。まずは、自社の現状把握です。自社の原価計算ルールがない場合は、当研究会が開発した原価分析シートに決算書の情報を入力することで、簡易的な原価計算ができます。
原価分析シート

コロナ前(例えば2019年)と現在の材料費を比較しますので、主要材料の購入価格を探して入力しましょう。仮に見つからなかった場合、鉄やアルミ等の原材料価格、軽油や電気等のエネルギー価格は業界団体の市況データを使えますし、人件費は各県の最低賃金で代用する企業が多いようです。原価の推移は値上げ交渉の際に必ず質問されることなので、過去と現在の原価分析を念入りに行って、値上げの根拠を用意します。

3. 価格設定

原価分析結果をもとに製品ごとに値上げ価格の案を作ります。申し入れた条件通りで合意することは多くなく、交渉の末に値上げ率が下がったり、値上げ適用時期が遅れたりします。

そこで、5%の値上げが必要な場合、5%で値上げを申し入れるとその後の交渉で5%を下回ることがよく発生します。ですから、値上げを申し入れる価格(例:10%UP)と着地点となる値上げ価格(例:5%UP)の両方の案を用意します。

4. 交渉準備

値上げを申し入れたら、お客様はどのように反応してくるのでしょうか。それを分かってないと、交渉の準備ができませんし、ぶっつけ本番になってしまいます。当研究会が集めた数多くの値上げ交渉事例によると、値上げを申入れられた顧客は、次のような反応を示します。
「値上げの根拠となるデータや資料を提示してください」
「値上げの適用時期を遅らせられませんか?」
「数量を増やしますから値上げ幅を抑えられませんか?」
等々

サプライヤーとの価格交渉を有利に進めるために、このような厳しい言葉を使うのですが、実はもう1つの目的があります。顧客社内の関係者を納得させるためです。自分が担当する資材の値上げが申し入れられると、上司である購買課長、その製品を使う製造部、設計する技術部など社内関係者に説明して納得してもらわないといけません。

社内関係者は「値上げの根拠は確かなのか」「値上げの時期を遅らせられないのか」「値上げ幅を抑えられないのか」と質問してくるので、購買担当者はそれに応酬するためのデータや知識を備えなければなりません。値上げを申し入れる営業員は、想定される顧客の反応をできるだけ多く書き出して、それに対する応酬話法と資料を事前準備しましょう。

【関連記事】 当研究会に所属する中小企業診断士が関わった値上げ交渉事例が数多くあります。事例を読んで、値上げ交渉の流れを理解しましょう。
値上げ交渉事例

5. ロープレの実施

いくら応酬話法と資料を用意しても、値上げ交渉という緊張する場面でその通りに発言できませんし、顧客から予期しない反応がくればお手上げです。そこで有効な準備方法が、値上げ交渉のロープレです。商談場面を細かく設定して、実際の商談を再現してみると、準備不足の点が明らかになります。当研究会では、値上げ交渉のロープレの指導を行っています。

6. 値上げ交渉の実施

実際の交渉では、事前に準備したデータや資料をもとに、自信を持って値上げの必要性を説明します。顧客の懸念や疑問に対して、具体的で説得力のある回答を用意することが重要です。また、値上げを強行して顧客との関係が悪くならないように、交渉中は顧客の意見に耳を傾け、冷静かつ柔軟に対応することが求められます。

また、価格の値上げが認められないケースがどうしても発生します。その場合は、発注ロットサイズを大きくする、原材料の仕様を見直したりしてコストダウンを図るなど、価格以外の部分で好条件を勝ち取るようにしましょう。

7. 交渉後のフォローアップ

値上げ交渉が受け入れられた場合でも、拒否された場合でも、顧客との関係を維持するためのフォローアップが必要です。値上げが受け入れられた場合は、顧客への感謝の意を表明し、今後の関係構築に努めます。拒否された場合でも、定期的なコミュニケーションを保ち、将来のチャンスに備えます。

結論

値上げ交渉を成功に導くためには、詳細な原価分析から始め、適切な価格設定、事前のシナリオ予習、充実した交渉準備、そしてロープレを通じて実際の交渉に備えることが重要です。これらのステップを踏むことで、困難な値上げ交渉を成功に導くことができます。


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値上げ交渉事例集 第2号
(プレス部品メーカー)
=失敗事例=



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