失注と敗戦は違います

前回コラムのテーマは「不戦敗を防ぐ」でした。「不戦敗」という言葉にギクッとして、読まれた方も多いようでした。今回のコラムは、不戦敗に近い内容として「失注」がテーマです。

失注をインターネットで検索すると「受注に失敗すること。具体的には、商品やサービスをプレゼンしたにもかかわらず発注をもらえなかったケースや、受注された取引がキャンセルになったケースなどを指します」と解説されています。営業活動のやり方がまずくて失注した、という理屈です。確かにそういう失注もありますが、営業現場応援隊を自称する筆者は、そうでないケースの方が多いと感じています。

ここで質問です。営業員が或る装置の案件を追いかけていて、クロージング活動を行ったところ、お客様が今すぐに装置導入することを選ばずに先送りしました。先週もお見せした訪問間隔管理表を掲示しますが、このお客様への今後の訪問間隔はどれが適切でしょうか。

77.訪問間隔設定表

お客様が或る装置や設備を導入する設備投資案件を例にとると、失注には、大きく分けて次の3つのケースがあります。
 1.敗戦:お客様は他社に発注して、当社は選ばれなかった
 2.中止:お客様は装置導入の検討を中止した
 3.延期:お客様はすぐに装置導入することを選ばず、導入する時期を遅らせた

この3つのうち、お客様が設備投資を実行する、つまり発注したかどうかという点で見ると、1.敗戦 だけが該当します。案件も消滅してしまいます。しかし、今回お尋ねしたケースでは、お客様は設備投資を実行していないので、1.敗戦 ではなく、2.中止 か 3.延期 にあたります。設備投資を実行していないということは、案件は消滅していないのです。

ここで、営業員がこの案件の追跡を続けるか、あるいは止めるかによって、営業力の違いが際立ってきます。正しい行動は、営業員がお客様と再度面談をして、設備投資案件が中止になったのか、延期になったのか、その理由とともに確認します。1年程度の延期であれば1ヵ月に1回の訪問、3年以上延期しそうならば3ヵ月に1回の訪問、のような訪問間隔が適当でしょうか。案件自体は脈々と生きていますので、目を離してはいけないのです。延期になった理由が「仕事量の減少」であれば、その企業の仕事量が回復すれば設備投資案件が再検討されるでしょう。SFA(営業支援システム)に案件登録する会社であれば、中止や延期は案件を失注(抹消)するのではなく、受注予定日を遅らせて受注確率を下げる対応が望ましいのです。

読者の皆さんも、近々買う予定はないのに、車のショールームに何度も足を運んだ経験がないでしょうか。予算や駐車場所、その他の事情で車を購入する状態にないだけで、買いたい気持ちは続いているのです。

営業は簡単に案件をあきらめてはいけません。お客様が事業を継続している限り、設備投資を常に視野に入れています。できる営業は、中止や延期になった理由をつかみ、その状況が変わるタイミングを虎視眈々と狙っています。

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