ビジョンを立てて、営業方針へ展開する
成功に不可欠な、関係者に共感してもらえる「経営理念」
事業を発展させる上で、事業活動の基本的な考え方を「経営理念」と言います。使命（ミッション）、存在意義、行動規範など、会社によって言い方はさまざまですが、会社の目的や存在意義、使命を表現したものであり、時代によらず不変です。会社の内に向かっては、社員が身近に感じて意識して行動できるように、分かりやすい端的な言葉で価値観を共有するためのものです。社外に向けては自社の存在意義を明らかにします。
成功する会社は、志が高く、しっかりとした経営理念を掲げています。お金儲けだけが事業目的だと、従業員、取引先や投資家といった関係者の心をとらえることができません。社会への貢献や還元であったり、社会に良い変化を与えることを提案したりすることではじめて、他人が共感してくれて協力が集まり、成功につながります。
ビジョンを通して「ありたい姿」を描く
ビジョンとは、その企業が目指す将来の具体的な姿であり、中長期的な目標になります。ビジョンをしっかり定義することで「こうしたい」「こうありたい」という将来の「ありたい姿」を描き、人と組織のベクトルを合わせ、従業員を動機付けることができます。従業員の新規採用の場面でも、有能な人材を引き寄せる引力を創り出します。ビジョンを表現するには、次の3つの方法があります。
1. 市場ポジションで述べる
「世界一の環境関連機器メーカーになる」「日本でシェアナンバーワンの小型モーターメーカーになる」というように、競合企業との序列、市場での位置付けで表現するものです。本田技研工業の創業者である本田宗一郎氏は、従業員が数人程度の町工場時代から「世界のホンダになろう」と声をかけていたそうです。
2. 経営指標で述べる
「20XX年に売上高を1兆円にする」「ROI（投資利益率）を５％にする」といったものです。単一の事業に従事していれば、1項の市場ポジションで表せますが、事業を多角化して新しいビジネスに積極的に進出する場合は、金額や率で表す方が状況変化に対応しやすくなります。
3. 組織と人の関係で述べる
「従業員にとって世界で一番幸せな仕事場を創る」というように、従業員の立場で表す表現です。
ビジョンと経営理念の関係を表したのが下図です。ビジョンを見ると、経営者の意気込みと従業員の目標が見えてきませんか。成功する企業には素晴らしいビジョンが不可欠なのです。
ビジョンを営業方針へ展開する
次に、ビジョンに沿って営業方針に展開していきます。営業方針は企業によって言い方は違いますが、長期目標、中期計画、短期計画として形作っていきます。当研究会が実施する営業力診断アンケートの回答をみると、中長期（3～5年）営業方針の理解度が短期（1年）営業方針の理解度よりも低い傾向が見られます。このことから、経営者は売上計画を達成するために短期の営業方針は折に触れて熱心に伝えているものの、中長期の営業方針を伝えきれてない状況がみてとれます。もっと言うと短期営業方針を作っていても、中長期営業方針を立ててない会社が多いように感じています。
理由は2つあります。環境変化が激しい現代において、3年先のことを正しく予測して営業方針として伝えられるか、という悩みを経営者が抱えていることは想像に難くありません。2つめとして、この先1年間の短期方針は現状をベースに作成するもののと、ビジョンと関連付けられてない企業が多いようです。ビジョンは壁に額が掲げられているものの、自分が目指す将来の具体的な姿だと実感できていないのです。そこで下図のように、ビジョンを「将来の具体的な姿」と見据えて、10年程度先の長期目標から、3～5年先の中期計画、直近1年の短期計画へ関連付けて設定することが有効です。
経営者がビジョンとや営業方針を熱く語っていれば、社員がその熱い想いを頭に入れて日々動けば、会社のベクトルは必然的に合っていきます。
営業方針へ展開する際の視点
上図に記したとおり、短期計画はお題目に終わらせず、進捗管理しやすい形で具体的・定量的に設定していきます。以下の視点を参考にしてください。
