チャネル政策としての代理店販売
代理店のタイプ
法人営業における販売ルートは、メーカーがユーザー企業に直接売る「直販(直接販売)」と、販売代理店を介して販売する「代販(代理店販売)」の2つがあります。法人営業の理論は直販を想定して語られることが多いですが、読者の皆さんも馴染みのある商社も代理店の一種ですから、業種・業態によりますが、代販の販売金額割合は無視できないほどです。
直販と代理店販売のいずれを採用するのか、そして、両方を採用するのならその割合はどの程度なのかを決めるチャネル政策は、営業方針において大変重要な戦略になります。代理店とは、特定のメーカーと契約を結び、商取引の代理や仲介をする販売店を意味しますので、生業は販売店(商社)です。印刷業界を例にとって、大きく分けて3タイプあります。
機械系代理店:印刷機や製版機などの印刷関連機械を販売する代理店・商社
材料系代理店:インキ、刷版などの印刷関連資材を販売する代理店・商社
地域特化型代理店:その地域に根差して、機械や材料などを取り扱う代理店・商社
代理店販売のメリット・デメリット
メーカーが直接売る直販と、代理店経由で売る代販とのメリットとデメリットをまとめてみました。
開発に特化したベンチャー企業のように自社営業力が弱い企業であっても、代理店の営業力に頼って売上を獲得できます。当然ながら、代理店のマージンが上乗せされるので、メーカーにとっては利益率が下がります。力のある代理店に頼めばその顧客基盤を活用できる一方、その代理店がライバル社に鞍替えすると売上が急減するリスクがあります。
一方、直販においてメーカーが直接ユーザー企業と接すれば、お客様との情報交流の質、量とも高くなり、その声を商品開発に役立てられますし、エンドユーザーとの関係を強化できます。一方で自社で営業マンを抱える分だけ営業費用は高くなります。また、新規顧客開拓やクレーム処理などあらゆる営業業務を、たとえ苦手であっても担う必要があります。
それぞれにメリットとデメリットがあります。代理店に、数あるメーカーの中から自社を選んでもらうためには、どういう取り組みが必要でしょうか。代理店にとっては、マージン率が高い商材の方が魅力的ですが、中長期的に成長させてくれるパートナーはどこか、代理店が取り扱う他の製品と相乗効果を発揮できる商材はどれだろうか、などいろいろな視点で考えています。だからこそ、メーカーとしては代理店と情報交換を密にして関係づくりをしていくことが大切です。
代理店の機能を活かす
代理店が担っている機能はほぼ共通しており、下の表のとおりです。メーカーから商品を大量調達して、自社のリスクで在庫を抱えて、全国津々浦々の販売店に配送するという、①調達販売機能、②物流機能を、卸売業である代理店が担っています。
しかし、インターネットや全国物流ネットワークが進化した現在、BtoBではモノタロウに代表される、強大なネット通販業者がその機能を担うようになりました。そのあおりを受ける形で、卸売業の強みが相対的に弱まっており、「中抜き」といわれるメーカーとユーザー企業がダイレクトに取引する割合が増えています。
代理店・販売店の生き残り策
ネット通販業者の隆盛によって、代理店、そして代理店から仕入れてユーザー企業に納める販売店が苦境に立たされています。では、彼ら中間流通がどのように自己変革して生き残りを図っていくべきか。その1つの答えが、情報を武器として提供することを強化していくことです。メーカーに対しては、市場の動向やニーズをもとに新製品開発や生産調整に役立つ情報を、販売店に対しては売れ筋や新製品情報をいち早く提供する情報提供機能の強化です。
2つめの答えは、ユーザー現場の困りごと解決です。例えば、工場の生産に欠かせない部品が故障した場合、知識と経験に裏打ちされた熟練工の方は、適切な代替品をネット通販で仕入れられるでしょう。しかし、熟練工が少なくなった今、呼べばすぐ来てくれる、目の前で起きている不具合を直接解決してくれる、そんな販売店が求められています。工場の安定稼働を重視する運営管理者からすれば、部品の安さに代えられない重要な機能です。
下の図は、商品の仕組みを3要素に分けたものです。中心にある「中核的な便益」、その外側にある「基本的な機能」では競合他社との差別化が難しくなっていますので、「付随的なサービス」を際立たせることも1つの選択肢です。前述の例は、品質保証とアフターサービスを際立たせた事例です。
困りごと解決力を強くするために、代理店がメーカーの力を借りながら販売店を導いていく。これが代理店のリテールサポート機能と言えます。
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