会社の方向性と社員の成長をつなぐ―営業人財の育て方
事業計画と社員の成長をつなぐ「人的資本経営」
筆者が伴走支援している企業で新分野への進出を検討すると、必ず話題になるのが「この分野に必要な知識やスキルを、社員にどう身につけてもらうか」です。新しい事業を担う人財を育てることは、計画を実行する上で欠かせない課題です。
人的資本経営とは、社員一人ひとりが持つ知識・経験・能力を「人的資本」と捉え、その成長や活躍を経営戦略の実行と企業価値の向上につなげる考え方です。会社の成長に必要な力を明らかにし、社員本人の希望や強みも踏まえて成長を支援することが大切です。会社の成長と社員の成長が重なることで、事業計画を実行する力も高まります。
社員にとって、仕事を通じて成長を実感できることは、幸せの一つです。営業力強化も、突き詰めれば「人が育つかどうか」に行き着きます。本コラムでは、会社の方向性と社員の成長をつなぐ人財強化の進め方を取り上げます。まず全体像を6つのステップで紹介し、続いて最初のステップ「①会社の方向性を示す」を掘り下げていきます。
会社の方向性と社員の成長をつなぐ6つのステップ

この図は、会社の方向性と社員の成長をつなぐ流れを、上から順に6つのステップで表したものです。
まず、会社がビジョンや事業計画を示し、計画発表の場で社員に伝えます(①)。それを聴いた社員は、自分の希望や得意分野、挑戦したい仕事を踏まえて、自らの成長の方向性(ありたい姿)を考えます(②)。会社から一方的に目標を割り当てるのではなく、社員本人の意思から出発することがカギになります。
次に、管理職と社員が対話し、会社の期待と本人の想いが重なるように成長目標として合意します(③)。この流れの要となるステップです。本人が納得した目標は、やらされる目標とは実行力がまったく違います。
合意した目標は、社員ごとのスキルマップに落とし込み、スキルの項目ごとに現状と目標のレベルを見える化します(④)。その上で、研修、OJT、職場経験を組み合わせて力を伸ばします(⑤)。人がもっとも大きく育つのは、少し背伸びが必要な仕事を任された経験からです。最後に、四半期ごと、半期ごとの面談や営業会議で定期的に振り返り、育成計画を見直します(⑥)。
このサイクルを回し続けることで、図の一番下にあるように、社員の成長が顧客への価値向上につながり、営業力の強化となって会社に返ってきます。
①会社の方向性を示す ― 発表会を「人が育つ場」にする
出発点は、会社が進む方向をはっきり示すことです。社長がビジョンを掲げ、それを実現するための事業計画をつくり、計画発表の場で全社員に伝えます。ただし、経営層が一方的に説明するだけでは「聞いて終わり」になりがちです。
筆者がこれまで見てきた中で、人が育ち、業績も伸びている会社には共通点があります。
• 事業計画発表会で、経営層からの説明に加えて、社員自身が発表する場を設けている。
• 遠方の事業所に勤める社員も一同に会する。
• 発表会の後はイベントやパーティを行う。経営幹部はホスト役に徹して社員をねぎらう。
ここまで来ると、経営方針発表会というよりも、一日がかりの社員総出のイベントですね!
社員の発表が人財育成につながる理由
優れた会社の社員発表には、二つの特徴があります。一つめは、自分の取り組みを会社の目的と重ね合わせて語ることです。「この受注が取れました」で終わらず、「会社が掲げる○○というビジョンに沿って、この顧客にこう貢献できた」と、会社の方向性と自分の仕事をつなげて説明します。発表を準備する過程で、社員は会社の方針を自分の言葉で読み解くことになります。経営層の説明を聞くだけの時よりも、はるかに深く方針が肚落ちします。
二つめは、発表の中で自分自身の成長に触れることです。「最初は顧客の話をうまく聞けなかったが、先輩の同行で質問の仕方を学んだ」「この経験で、技術を顧客の言葉で説明する力がついた」といった具合です。自分の成長を振り返り、人前で語ることで、本人は成長を実感します。そして次に伸ばしたい力を、自然と考えるようになります。
この発表は、聞いている側にも効果があります。同じ職場の仲間が、会社の方向性に沿って成長していく姿は、どんな説明よりも説得力のある「お手本」です。「自分もあのようになりたい」と思った社員は、図1の②「成長の方向性を考える」に、自分から進んでいきます。
まり、社員が発表する事業計画発表会は、方針を伝える場であると同時に、人を育てる場になっているのです。会社の方向性を示す①が、社員の成長を描く②へと、自然につながっていきます。
まず発表会を開き、次に社員にも発表してもらう
「うちはそもそも事業計画発表会をやっていない」という会社もあるでしょう。中小企業では、事業計画が社長の頭の中にしかない、あるいは計画書はあっても幹部しか見ていない、というケースも珍しくありません。
そのような会社には、次の二段階で始めることをお勧めします。
1. まず、発表会を開く。 立派な会場や資料は要りません。全社員を集め、社長が自分の言葉でビジョンと今期の計画を語る場をつくります。年に一度、会社の方向性を全員で共有することが出発点です。
2. 次に、社員にも発表してもらう。 発表会が定着したら、社員の発表枠を設けます。最初は各部門から一人、5分程度の成功事例発表で十分です。発表のテーマとして「会社の方針とどうつながっているか」「この取り組みで自分は何を身につけたか」の二点を必ず入れてもらうようにします。
社員の発表を準備する際は、上司が一緒に内容を考えることも大切です。どの事例を選ぶか、会社の方針とどう結びつけるかを話し合うこと自体が、図1の③「対話と合意」の練習になります。
完璧な発表会を目指す必要はありません。まずやってみて、回を重ねるごとに良くしていけばよいのです。
人財育成につながる事業計画発表会へ
会社の方向性を示すことは、6つのステップの出発点です。ただし、経営層が一方的に説明するだけでは、社員の成長にはつながりません。社員が会社の目的と自分の仕事を重ね合わせ、自らの成長を語る場をつくることで、事業計画発表会は「人が育つ場」に変わります。
次の事業計画発表会を、社員の成長が始まる日にしてみませんか。次回以降のコラムでは、②以降のステップを順に掘り下げていく予定です。人財強化や営業力強化の進め方でお悩みの方は、30分の無料オンライン相談会もご活用ください。
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