オンライン商談ではいきなり本題へ
対面での商談は、お決まりの儀式から始まります。まず、厳かに名刺交換を行います。名刺を交換する順番、受け取る姿勢、交換後の一言の会話など、名刺交換だけで一冊のビジネスマナー本を著せるほど決まりごとが多くあります。
着席したら、相手の席順に合わせて名刺を並べます。これは相手の顔と名前・役職を間違えないように、さりげなく見える場所にカンニングペーパーを置いておく工夫です。それから、政治や宗教などのテーマを避けながら、天気やスポーツなど害のない雑談が続きます。お互いに間合いを図りながら、誰かが「ところで今日は」と発言すると、全員が「待ってました」とばかりに姿勢を正して、一気に商談が始まります。
新型コロナウイルス感染対策により一気に広がったオンライン商談では、商談の入り方が一変します。物理的に同じ場所にいないので、当然のこととして名刺交換がありません。相手が大人数になると、所属や役職を知らない相手と商談を行うこともあります。世間話をこちらからふっても相手が一言返すだけだと会話が続かず、雑談がないままに商談に入ります。
ところでオンライン商談でなくなった雑談には、どういう意味があるのでしょうか。商談前の別の仕事から思考モードを切り替えて当商談に集中してもらう、お互い打ち解けることで本音を言いやすくなる効果があります。対面だとお互いの表情、視線の投げかけや手ぶりから、五感を総動員して関係性を強めて、関係づくりをしていくのです。
関係強化しやすい対面商談から、名刺交換や雑談がないオンライン商談へ変わると、当然のことながら商談参加者は新たなスキルを身に着けることが求められます。