行動の裏に隠れたお客様の目的を探ろう!
貴方が営業マネージャーだった場合、この商談記録を読んでどのような行動を起こしますか。営業員がお客様から価格を訊かれるのはよくあることなので、読んでそのままスルーする方が多いでしょうか。
お客様が概算価格を知りたいので価格提示した。これでは、営業日報の名残です。ここでいう営業日報とは、1日の仕事内容を詳細に記録して、朝から夕方までさぼらずに働いたことを証明するための、勤怠管理を兼ねたものです。営業マネージャーが知りたいのは営業員の行動よりも、概算価格が必要になった「お客様の目的」です。
「概算でいいから御社のCX機の価格を教えてもらえませんか」とお客様から訊かれた際、経験が浅い営業員は、喜び勇んで「わかりました。上司と相談して至急ご提示します!」と回答します。それでは前述の営業記録になってしまいます。
できる営業員の会話を再現してみましょう。
お客様:概算でいいから御社のCX機の価格を教えてもらえませんか。
営業員:承知致しました。いまは予算を組む時期ですが、予算取りのためですか?
お客様:そうなんですよ。
営業員:失礼ですが、時期は来期ですか?
お客様:いえ、再来期です。
営業員:2年先ですか。本件への投資はもう決定しておられるのですか?
お客様:いえ、まだです。既設機が老朽化しているので工場としては入れたいと考えています。これから投資対効果を計算して、1年後に取締役会へ投資申請したいので、いまはその予算取りです。
営業員:わかりました。生産性の評価やテストが必要になりますので、弊社として最大限協力させて頂きます。
お客様:それは助かります。ぜひご協力をお願いします。
ここでは4回のやりとりが繰り返されています。貴社の営業員は1回目あたりで質問を終えていませんか。「あまり深く質問するとお客様が気分を害される」と躊躇する営業員が多いのですが、お客様の許容ラインは、こちらが考えるより向こう側にあるものです。そして、お客様は良い投資申請書を作成して会社に承認してもらわないといけないので、メーカーの協力を有難がります、というか必要不可欠です。このやりとりによって、下右のような商談記録になります。
SFAへの登録はここで終わり、という営業員が多いのですが、もう1つ大事な登録作業が残っています。営業支援システムSFAには商談を記録する機能のほか、案件(引合い)を登録して管理する機能があります。実は、この会話には案件が隠れています。「予算取り段階にある2年後に納入見込のCX機案件」です。案件ランクでいうと、案件を察知した段階なので、弊社で言うランク1で案件登録します。案件に一度登録しておくと、営業員は忘れずに次回訪問でお客様に進捗確認しますし、会社としては再来期の売上見込案件の1つとしてカウントできます。
もう1ラウンド続けましょう。次のような商談記録をお読みください。
これも同様に営業日報にとどまっており、提示した正式見積に対してお客様がどう感じたのか、提示価格を受け容れて頂けそうなのかどうか、お客様の反応がわかりません。ここでもお客様をしっかり観察して、幾つかやりとりを繰り返すことで下右のような商談記録に変わります。
営業マネージャーは営業員の商談記録を見るたびに、お客様の動きに注目して、それが書かれてなければ、必ず営業員に指導するようにしましょう。そして、何気ないお客様の動きの中に案件を察知して、低い確度の段階から案件登録していきましょう。これを繰り返すことでお客様の動きが見えるようになり、案件管理や会社の売上見込の精度が上がっていきます。