営業業務改善によってムダを取り除く

「営業力を強化すべく訪問数を増やそう」と方針を出しても「こんなに忙しいんですから、新規開拓訪問する時間がありません」と現場の抵抗を受けることが多い。確かに、営業職に限らずどの職種も10年前、20年前に比べたら業務量が飛躍的に増えていて、出先にいてもすき間時間に携帯電話やモバイルパソコンと格闘しなければならない時代になりました。

そこで筆者が営業改革に関与する場合、営業業務改善から取り組むことがあります。営業現場には見積作成、受注後の伝票処理、営業会議資料作成など営業周辺業務が膨大にあります。それは年々増えているので、その負荷を減らさないと本来の営業訪問活動に時間を割けないことがほとんどです。

筆者は以前メーカーに勤めていた頃にQC(品質管理)活動の委員長を務めたこともあるので、QC技法を使った業務改善活動は十八番です。営業力強化の成果出しには時間がかかりますし成功確率は会社によって変わってきますが、業務改善だと半年程度で定量的な成果を確実に出せます。或る印刷会社でQC活動の成果発表会を開いた際には、社長のお母様(会長)が「うちの可愛い社員は大して出来ないと思ってたけど、成果をしっかり出してこんなに立派に発表するなんて」と涙を流して喜んだほどです。

業務改善は製造現場に限らず、営業現場でも十分通用します。その取り組みの一部を紹介します。
まず最初に関係者に集まってもらって、実際の業務改善事例を写真とデータで見せながら、ムダとは何か、どういう手順で業務改善すればよいのか、業務改善手法をわかりやすく説明する所から始めます。この図は、或る工場のネジ締め工程において発生する作業を、本作業と付随作業に仕分けしたものです。

83.業務改善.現状把握グラフ

ネジ締めは本作業であり、締めた製品を函に納めることは付随作業になります。なぜならば、ネジを締めてAとBの部品を一体化することがこの工程の付加価値であり、過渡的に部品の場所を動かすことは何の効用も後に残さないからです。

この説明を終えると、経理部員が手を挙げて尋ねました。「私の部署では他部署が起票した支払伝票をチェックしていますが、これは本作業でしょうか」。一連の支払手続き業務において多くの場合「仕入業者等から届いた請求書の内容と実際とが一致することを確認する」「金融機関から代金を振り込む」の2つだけが本作業です。では付随作業なのかムダなのか。両者の違いは、図の左側に記載した通り「本作業のために必要な作業なのか」「なくしても作業に全く影響のない作業なのか」です。

前述の支払伝票チェックは付随作業のように見えますが、QC活動の視点から厳しく判定すると、ムダとなります。なぜならば、そもそも間違いが起こらない仕組みを作れば、間違いがないかチェックする作業は必要なくなります。こういった質疑応答を繰り返すと、社員は目覚めます。目の色が変わります。

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