補助金採択後こそ事業計画書の作成が不可欠

或る大手機械メーカーの企画スタッフと意見交換することがあり、補助金が採択されて設備投資したけれども、その後の取り組みが不十分な企業が多いことに意気投合しました。詳しく説明しますと、事業再構築補助金やものづくり補助金など、設備投資に使える補助金が、コロナ禍で増えています。補助金申請コンサルタントが手伝って申請書類を作成して、採択後に設備導入の事務処理フォローをしています。しかし、コンサルタントの支援がそこで終わっているケースが実に多いのです。

事業者にとっては、設備投資後の活動こそが正念場です。補助金によって割安に設備を購入できたことに満足する事業者が多いですが、実際には設備投資を行うと減価償却費が増えて、採算がとれる売上高(損益分岐点売上高)が上昇します。生産能力が拡大にするのに合わせて売上が同程度増えなければ、利益率が以前よりも悪化します。

では何をすべきなのでしょうか。補助金採択によって設備投資をしたら、事業計画書を作成して着実に実行する。事業計画書の中で取り決めた営業力強化策によって、増えた生産能力を売上に変えて売上UPを図る。この2つが不可欠です。本コラムでは1つ目の、事業計画書のつくり方を説明します。

筆者が著した「事業計画書のつくり方」(2007年発行、あさ出版)は15回の増刷を重ねて、今も店頭に並ぶロングセラーです。4章から構成されますが、第1章が「環境分析・事業の切り口」です。現在はDX化、脱炭素化など大きな環境変化が進んでいますから、SWOT分析などを通して自社が置かれている事業環境を分析して、自社が成長する方向性を探ります。

事業計画書.環境分析.SWOT分析

第2章が「事業の枠組み」です。企業の経営理念、ビジョン、そして目標を決めた上で、事業や新商品のコンセプトをつくっていきます。激変する環境下でその商品の魅力や競争力は何なのか、どうやって他社と差別化できるのか、明確にしていきます。

事業計画書.経営理念.ビジョン.目標

事業の枠組みを定めたら、第3章「数値計画」に進みます。売上利益計画は商品別、顧客別にブレイクダウンし、見込客リストに基づいて売上見込を固めていきます。計画を立てた売上高を達成できない会社が多いですが、その原因の一つは、この数値計画の精緻さが不足していて、営業行動に展開できてないためです。

事業計画書.売上計画.利益計画

昨年からは、拙著をテキストにして日本農業経営大学校で「事業構想」の科目を教えています。大規模農業・畜産業の生産者のご子息が全国から集まり、彼ら・彼女らがビジネスプランを作成するお手伝いをしています。そのために、テキストとして読むための拙著のほか、教室で映写して説明するためのパワーポイント資料(図表の右側に並べたもの)、記入するためのテンプレートまで揃えています。これらがあれば、本コラムを読んでおられる事業者の方も、スムーズに事業計画書の作成に取り組むことができます。

補助金申請時に、採択されるための事業計画を一度作っています。補助金が採択されて設備が導入されたら、自分たちが実行可能な事業計画に練り直す作業を行うのです。それによって、設備投資を売上UPにつなげていきましょう。事業計画書は大切です、荒波の中を航海する羅針盤として!

最後に、拙著「事業計画書のつくり方」を宣伝させてください。
あさ出版さんに、16回目の増刷をしていただけるように、ご購入いただけたら幸いです。
あさ出版ホームページ「事業計画書のつくり方」

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