分野を絞り込んでNo.1をつくる
「日本で一番高い山は?」と問うと「富士山」という答えが即座に返ってきます。次に「二番目に高い山は?」と尋ねると、よほど物知りな人でないと答えられません。「日本で二番目に面積が広い湖」「日本で二番目に人口が多い都道府県」も同様です。それくらいNo.1は人々の記憶に残り、No.2以下だと覚えている人が少なくなります。
1987年に発売されたアサヒスーパードライは、販売量をグングン伸ばすも、当時はキリンラガーというガリバーブランドが立ちはだかっていました。そこでスーパードライは「生ビールNo.1」を強く打ち出しました。そんなテレビコマーシャルを覚えておられる読者も多いと思います。
キリンラガーがNo.1。アサヒスーパードライもNo.1。ということはNo.1が2つある? どちらかがうそ? そんなことはありません。どちらもNo.1ですが、ここにアサヒの工夫があります。
ビールは水・大麦・ホップを主原料として、麦汁に酵母を入れて発酵させて、ある段階で発酵を止めるために加熱処理を行います。1960年以降になると濾過技術が飛躍的に上がり、加熱処理を行わない「生ビール」が増えていきました。ビール全体では加熱処理するキリンラガーが長くNo.1に君臨していましたが、加熱処理ビールを除いた生ビールのカテゴリーに限定すれば、スーバードライがNo.1でした。つまり、No.1を言いたいために「生ビールNo.1」と強調したのです。
その後、スーパードライはさらに売上を増やし、1998年には加熱処理ビールを含めたビール全体で年間売上No.1になりました。この写真は2010年に店頭に並んでいたスーパードライです。「2009年ビール売上No.1」と打ち出しているのがお分かりでしょう。
貴社の場合も同様です。ある特定の分野でNo.1を作りましょう。
日本全体で勝負する大手企業でなければ、日本一でなくても●●県でNo.1、●●市でNo.1、で十分です。また「●●業務用」のように用途を絞る、「ティーンエイジャー向け」のように客層を絞るなど、自社が強みを発揮できる分野に絞り込んで、ある特定の分野でNo.1を作りましょう。そして、営業員が会社紹介の中でアピールしたり、ホームページに目立たせたりなど、しっかりお客様の記憶にとどめるように訴求しましょう。No.1は人々の記憶に残り、No.2以下だと覚えている人が少なくなるからです。