ターゲットリストの訪問間隔を決める

前号コラムでは、ターゲットリストを用いて「行きやすい既存客」の訪問件数を制限して、つい足が遠のきがちな「行きにくい新規客」への訪問を励行する手法を説明しました。どこに訪問すべきか決めたら、次はどのくらいの頻度で訪問するか、を設計していきます。ターゲットリストを運用している会社でも、訪問頻度(言い方を変えると訪問間隔)を営業員任せにしている会社が多いように思います。

強く意識していただきたいのですが、営業員の顧客訪問件数は有限です。ここで、1人の営業員が1ヵ月に訪問可能な件数を計算してみましょう。土、日、祝日を除くと1ヵ月の稼働日数は約20日です。そこから営業会議への参加やそのための資料準備、伝票処理、さらに待ったなしで対処しなければならないクレーム対応などを差し引くと、顧客訪問にまるまる費やせる日は1ヵ月に15日くらいしかありません。商談に時間を費やす営業スタイルだと1日に5社訪問、客先での滞在時間が短い御用聞き営業で1日に7社訪問できたとして、次のような式で1ヵ月の訪問可能件数を計算できます。
 1日に5社訪問できる場合 5件/日×15日/月=75件/月
 1日に7社訪問できる場合 7件/日×15日/月=105件/月

つまり、営業員1人が1ヵ月に訪問できる件数は75件から100件程度です。月に1回訪問しなければならないお客様が100社あれば、それだけで1ヵ月の訪問件数が100件となります。これ以外にも、新規開拓先、集金訪問などで回らなければならないお客様がありますので、訪問件数が到底足りません。これがわかってなくて訪問計画を立てると、計画が未達成になります。達成不可能な目標を設定した上司が悪いのです。

営業員の顧客訪問は、法人営業において最重要な活動です。そして時間という点から有限なリソース(経営資源)なのです。この有限の訪問件数、1人当たり1ヵ月に75件から100件をどの会社に割り振るか、が重要な営業戦略になります。

そこで、訪問間隔の設定を行います。商談がクロージングの時期にかかっているお客様であれば、週1回は訪問が必要な「訪問間隔Ⅰグループ」にします。このように、すでに案件化しているお客様は上司が指示しなくても担当者は訪問しますので、訪問間隔の設定はあまり必要ありません。案件化してないお客様を、たとえば半年以内に案件化が見込めそうなお客様であればⅡの毎月1回の訪問、つまり30日間隔に設定します。さらに、Ⅲの2ヵ月に1回(60日間隔)、Ⅳの3ヵ月に1回(90日間隔)から、Ⅴの年に2回(180日間隔)まで設定します。180日間隔というのは、タオルなどの粗品を夏に、カレンダーを年末に配るような、年2回程度訪問するお客様です。これらを組み合わせることで下図のように1ヵ月で75件に到達します。むしろオーバーしがちなので、どうやって75件に抑えるかが、工夫のしどころです。
77.訪問間隔設定表

これ以外にも定期的に接触をして関係を維持しておくべきお客様が数多くあります。訪問件数上限を超えているので訪問できませんから、電話やメールで集中してコンタクトする日を月に1回設けます。電話やメールのような個別対応が必要でないお客様へは、会社の最新イベントや商品をDMにまとめて「ぜひご来場ください」と手書きして投函します。最近であれば、インサイドセールス(内勤営業部隊)がこの部分を担ってくれるようになりました。

面倒くさいと思われるでしょうが、営業員の訪問計画をしっかり練っておくことで、「頑張れば何とか達成できる訪問計画」を作ることができるようになります。物理的に達成困難な計画では、営業員がついていけません。達成可能な訪問計画を上司と担当者が一緒に練り上げて、確実に訪問実施するようにしましょう。

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