経営者はMAの効果を定量化して伝えているか
筆者が継続支援している製造業のA社は、或る業界でのシェアを高める活動を行う一環で、MA(マーケティングオートメーション)を強化することになりました。MAの成果をどのように定量化できるのか、についてお話しします。
A社はコーポレートサイトに加えてサービスサイトを近年充実させています。ちなみに、コーポレートサイトとは、会社概要、沿革、企業理念や商品概要のような、企業に関する基本的な情報を提供するサイトです。一方、サービスサイトには、製品やサービスの概要、仕様、導入事例、テストレポートなどのお役立ち情報を多数掲載して、見込客を資料ダウンロードやお問い合わせに誘導しています。
A社はサービスサイト充実に加えて、メールマガジンや展示会などを通じて、下記に示す「売上UPピラミッド」の一番下「見込客の獲得」プロセスを確立しています。しかし「見込客の育成・選定」プロセスが十分でないために、獲得した多くの見込客を育成・選定して、営業部門が手掛ける「初回訪問・情報提供」プロセスへ送り届ける機能が不十分でした。そこでMAを強化することで、ボトルネックの解消を図ることになりました。
MAの活動を強化すれば当面は、それでなくても忙しいマーケティングスタッフの負荷を高めます。そこで、実施した場合の効果を明示することで、スタッフは理解を深めて取り組んでくれるようになります。
まず改善前の現状を見てみます。例えば、展示会の当社ブースを訪れた見込客をフォローするケースを取り上げます。下図のように、1-1の見込客の絞り込みから、アポどり、初回訪問、訪問結果のまとめを経て継続訪問に至るまで、訪問活動や社内会議を何度も重ねる中で、膨大な労力と時間を費やします。
MAの効果は「初回訪問・情報提供」プロセスにおける営業活動に顕著に現れます。MAにおいては、魅力的なコンテンツを揃えた後に、メールマガジンやセミナーへの見込客の反応を記録して、インサイドセールスと言われる内勤営業員がメールや電話で困りごとをお伺いして、見込度を推し量ります。見込度が高くなった見込客を外勤営業員にバトンタッチすれば、すでに温まっている見込客ですから、1-1から1-5までに示した活動をせずに、もう一つ上のプロセスに一足飛びで進めます。
経営者が果たすべき役割とは、表からは見えにくい営業の労力や費やす時間を定量化して、マーケティングスタッフに理解してもらって、動機付けすることです。それによって内勤のマーケティングスタッフと外勤営業との距離がグッと縮まり、協力体制が築かれるようになります。