営業ツールを充実して属人的営業から脱却しよう

属人的な営業の問題点

法人営業を行う企業を訪問すると、必ず出てくるのが「当社の営業は属人的です」「営業員が個人商店化しています」という嘆きの言葉です。属人的な営業とは、営業活動が個々の担当者のスキルや経験に強く依存している状態を言います。

属人的な組織だと、担当者が不在のときには顧客対応や業務ができなくなります。実際、顧客に値上げ交渉しようにも、営業部長が急に退職してしまい、過去の経緯がわからずに苦労している経営者を筆者は知っています。また、ある人が成果を上げても、そのスキルや成功事例が共有されていないと、組織全体のレベルアップにつながりませんし、やり方が明文化されていないために新人がなかなか育ちません。

営業ツールの充実

企業が安定した売上を上げるためには、人に頼るのではなく、誰でも一定レベルの営業力を発揮できる仕組みが不可欠です。そこでまず実施して頂きたいことが、営業活動の中で使う「営業ツール」を充実することです。たとえば、商品提案に用いる営業ツールとして、次のようなものを用意しましょう。

会社案内や商品カタログを揃えている会社は多いでしょうが、問題はその次です。属人的な会社では、顧客への提案方法について無頓着で、顧客に提出する提案書づくりが担当者任せになっています。多くのケースでは、個々の営業員がそれぞれ提案書を作っていて、営業部内で提案書を共有していません。ということは、Aという商品の提案書を何人もが作っている状態です。1つの提案書作成に2時間かかり、5人が同じ作業をすれば10時間もかかるわけです。複数の人が同じ作業を繰り返すのは効率が悪く、提案書づくりが苦手な営業員は困り果てます。

解決策としては、商品企画や営業企画を担うスタッフが代表して提案書を作ることをお薦めします。作成したら、営業会議の中で提案書の趣旨や使い方を説明して、提案書の保管場所を明示しておくと、営業員は助かります。営業員はその提案書ひな型を取り出して、提案先の事情に合わせて一部修正するだけで済みます。提案書以外にも、導入事例集やお客様の声があると良いでしょう。

営業ツールを整備するだけで、お客様への提案回数は間違いなく増えます。そして提案の質が上がるので、見積や受注などの次の営業プロセスに進みやすくなります。

メーカーは代理店・商社が使う営業ツールを用意する

「営業員が使う提案書は数多く用意しています」とメーカーの営業企画スタッフがおっしゃると、私は聞き返しています。「メーカーから代理店・商社に対する提案書を用意しているのはわかりました。では、貴社の顧客である代理店・商社がその先の顧客に対して用いる提案書を用意していますか」。

多くのメーカーが用意していません。メーカーがそこまで用意すれば、代理店・商社は自作しなくて済み、提案回数が増えます。その商品について一番詳しいのはメーカーです。巡り巡って自らの役に立つわけですから、メーカーが提案書を用意すれば売上UPにつながります。

商品提案に用いる営業ツールを詳しくご紹介しましたが、それ以外にも、「お客様が商品を詳細検討するために用いる営業ツール」「見積提示時に用いる営業ツール」など、営業シーンに合わせて用意していきましょう。営業ツールの詳細は、渡邉卓著「図解で早わかり 営業力強化の基本と手法」(アニモ出版)の7-8項(P.146-147)に掲載されています。

目次や1章の内容は、アマゾンの当書籍ページでご覧いただけます。
アマゾン「図解で早わかり 営業力強化の基本と手法」

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