ローカルベンチマーク(ロカベン)で営業の課題を掘り下げて売上UPにつなげる

ロカベンとは企業の健康診断を行うツール

今回は、国や行政の中小企業施策を経営者に伝える役割をもつ、中小企業診断士らしいテーマです。

ローカルベンチマーク(通称「ロカベン」)をご存じでしょうか。企業の経営状態の把握、いわゆる「企業の健康診断」を行うツールとして、中小企業を支援する公共機関や金融機関において活用されています。ロカベンの項目に沿って、中小企業診断士のような支援者が企業の経営者と対話しながら、企業経営の現状や課題を相互に理解して経営改善に役立てていきます。

ロカベンには多様な診断項目が揃っています。収益性(営業利益率)や生産性(労働生産性)などの視点からレーダーチャートの形で可視化する「財務分析」、経営者/事業/企業を取り巻く環境・関係者/内部管理体制から企業を分析する「4つの視点」などです。

競合他社と比べた差別化ポイントを企業から引き出す

その中でも読者の皆様に使っていただきたいのが「業務フローと差別化ポイント」です。ここを正確に把握できれば、企業のビジネスモデルと強みが明確になります。食品工場などで使用される設備部品を取り扱う卸売業の事例をご紹介します。図の見方としては、上段の左側から右へ向かって業務が進んでいきます。商品調達・在庫⇒情報提供⇒提案⇒納品⇒アフターフォローの業務フローになります。

上記の5つの業務フローの中で営業に関係するのは、赤枠で囲った「情報提供」「提案」「アフターフォロー」の3つです。下段にはそれぞれの営業プロセスにおける、競合他社と比べた差別化ポイントが記載されています。中でも太字で書かれた箇所が強みになります。

左から2列目の「情報提供」の業務フローを例にとると、上段の実施内容は「メーカー等から得た情報を定期的に販売店に情報提供する。販売店と同行してユーザー工場に同行して直接情報提供する」。これだけ読むと、卸売業者として当然の情報提供機能を果たしているに過ぎません。

支援者がさらに対話を重ねることで、その企業は「食品衛生法改正などお役立ち情報を1枚にまとめて、顧客に毎週配信」していることがわかりました。お役立ち情報を1枚に凝縮して毎週顧客に提供しているのです。

さらに「紙の情報に加えて、現場に出向いて直接説明する」。つまり、紙を渡すだけでは伝わりづらいこともあるので、重要な内容であればユーザー工場の現場に出向いて直接説明して、確実に情報を伝達することに尽力しています。

このように、商品調達・在庫⇒情報提供⇒提案⇒納品⇒アフターフォローという業務フロー全体をみると、当社の強みが浮き彫りになります。ここまで具体化できれば、効果的な改善提案が可能になります。

営業についての知識や経験が少ない支援者を援けたい

ある地方の支援機関の方にお聞きすると、金融機関からはもっと具体的で効果的な営業施策を提案して改善計画につなげて欲しいという要望が寄せられているそうです。売上UPに直結する業務フローは営業なのですが、営業について触れてなかったり、書かれていても掘り下げ方が甘かったりするケースがあるようです。

その背景を想像すると、事業計画の作成には詳しくても、営業についての知識や経験が少ない支援者が多いからではないか、という仮説をもっています。

そこで、筆者が代表を務める「営業力を科学する売上UP研究会」では、中小企業支援者が事前に参照して経営者との対話に臨めるように、ロカベンを活用して営業課題を掘り下げるための対話ツールを開発しています。

①業種別、営業タイプ別に用意した業務フローの記入例
本コラムでは設備部品の卸売業をご紹介しましたが、さまざまな業種や営業タイプ(例:御用聞きスタイルなど)の業務フローの例から、支援者に完成イメージを持って頂くものです。

②営業についての問題や課題を経営者から聞き出すための質問リスト
情報発信、展示会出展、継続訪問、情報提供、提案、見積、受注、納品、納品後フォロー、アフターサービス等の業務フローごとに、多彩な質問例をリスト化して用意しています。

ロカベン無料モニター募集!

今秋中には完成して広く公開する予定でして、今は急ピッチで開発している最中です。ついては、より完成度を高めるために、当ツールを支援現場で使っていただけるロカベン無料モニターを募集します。次のような方は、ご協力をお願いします。
・ロカベンを使っている中小企業支援者・支援機関の方
・当研究会から提供するロカベン掘り下げツールを使って、10月下旬までに診断を実施して、ロカベン「業務フローと差別化ポイント」を作っていただける方

ご興味のある方は、ホームページ右上の「お問い合わせ」ボタンからご相談ください。お待ちしています!

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