重点顧客の情報を一元管理する

前号コラムで、重点顧客に対しては経営層、工場、設計部門などの重要職場のキーマンとの人間関係を強めて、情報や協力を得られる関係を築くことが大切だと説明しました。しかし、会社一丸で重点顧客との関係づくりに取り組もうにも、顧客情報が社内で共有化されていないために、スムーズに進まないケースがよくあります。

営業や技術の担当者が重点顧客の情報を熱心に集めてSFA(営業支援システム)や技術日報に記録していても、その顧客の情報が相互に関連付けられずに細切れに保管されていれば、会社として分析して活用できる顧客情報とは言えません。例えば、営業部門がSFAに情報を一元化していても、技術者がSFAにアクセスできる会社は多くありません。なぜならば、技術者がわざわざSFAを見に行く時間的な余裕がないですし、著名企業のSFAだと1アカウントの月間ライセンス料が1万円以上しますので、技術部門の幹部クラスしか付与されないケースが大半です。

法人営業において有効な手法として、A3横サイズの「顧客戦略シート」をご提案します。重点顧客の基本情報を一覧表にまとめて「見える化」することが、この場合にはとても有効です。

一番上には、重点顧客の強みと弱みを列記します。次に、重点顧客の主要仕入先と主要得意先を記載します。重点顧客の強みや得意先が分かれば、次に主要製品とその特徴をわかる範囲で記載します。それぞれの商品で「中堅化粧品メーカーに強い」「大企業から中小企業まで幅広く対応」「或るカテゴリーでシェア●%を占める」などと書き込みます。取引がない状態だとわからない部分が多いですが、不確かなことは「仮説」と添えて書くようにします。

こうした「書く作業」を通じて「知っていること」と「知らないこと」に分けられ、「知らないこと」や「仮説」を頭の片隅に入れながら、営業活動の中で情報収集していきます。それらの情報が新たに分かれば、顧客戦略シートに追記していきます。

これら情報をまとめると、顧客はA商品が競争力を失いつつあるので●●のような技術的特徴を付加して差別化を狙っている、ということが読めてきます。このように顧客の立場に立って考えると、顧客が次にどういう行動に出てくるか予想しやすくなり、先んじた営業活動ができます。A3サイズの顧客戦略シートにはその他にも多くの情報を書き込むのですが、その冒頭部分は下のようになっています。

顧客戦略シート

「今さらEXCELで管理するのですか!」というなかれ。確かにクラウド上のSFAはどこからでも登録できて閲覧できる効果がありますが、プリントアウトには適してなく、全体を一目でつかむ目的には向いていません。また、冒頭で申し上げた通り、SFAは技術者が閲覧できないことが多いので、現実的な解決策として実に重宝します。

【関連記事】
営業力強化メニュー「重点顧客との関係強化法

関連記事

  1. 組織営業における担当者の役割
  2. 事業計画書.環境分析.SWOT分析 補助金採択後こそ事業計画書の作成が不可欠
  3. HP月間PV推移グラフ ホームページの閲覧数を増やす秘訣とは?
  4. セミナーの目的を明確にする
  5. 調査相手から正しい数字を聞き出せるヒアリング法 調査相手から正しい数字を聞き出せるヒアリング法
  6. 定量的と定性的な営業方針の立て方 定量的と定性的の意味と使い分け方
  7. 売上UPピラミッド基本形 案件が見積りから始まるのは良いことか?
  8. 正式見積提示SFA商談記録の良い例 行動の裏に隠れたお客様の目的を探ろう!
PAGE TOP