重点顧客との関係強化は、事業計画と関連付ける

前回コラムで、会社の総力を挙げて活動することが求められる重点顧客との関係強化では、重点顧客の強みや弱み、主要製品の特徴や位置づけを分析することで、重点顧客が次にどのような行動に出てくるか予想しやすくなり、先んじた営業活動ができる、と申し上げました。

筆者がご支援しているメーカーで「顧客戦略シート」を実際に使ってみると、「当社を大事に考えてくださるキーマンが一人しかいないことがわかった。この方が別の部署に異動したら当社との関係がたちまち弱まってしまう」、「同じ製品を扱うA社とB社の顧客戦略シートを作ったら、A社とB社の戦略の違いがよく理解できた」という気付きを得ていただけました。そこで、キーマンが一人だけの重点顧客に対しては、営業部門だけでなく技術や製造などの部門の協力を得たり、要所では社長や役員に出向いてもらったり等、対策を作っていきました。

それでは、重点顧客に対する「顧客戦略シート」のつくり方について、具体的に解説していきます。まず、3年後のあるべき姿を描きます。定量目標として売上高目標を、定性目標として例えば「重点顧客のA購買部品のNo.1サプライヤーになる」という目標を立てます。事業計画(短期計画、中期計画など)を立てている会社であれば、その計画と整合性のある目標を立てることがポイントです。中期計画と連動した目標を設定することで、営業部門内のみならず、技術部門や製造部門の協力を得やすくなります。

顧客戦略シート

続いて、3年後の目標を達成するために分野別に基本戦略を立てます。「組織戦略」では「更なる関係の深化(トップ、技術)」のように関係づくりの方法を描きます。次に「製品戦略」では「●●等当社でとれてない部分を目指す」というふうに、どの商品を重点的に売り込むか決めていきます。さらに「競合戦略」では「研究開発担当者の取り込みによる新製品受注」と、競合にどう勝つのか戦略を描きます。このように、組織戦略、製品戦略、競合戦略など、重要な分野別に戦略を描いて、法人営業の具体的活動に落とし込んで進めていくことで、社内関係者の考え方を合わせていきましょう。

読者の皆さんは「難しいなあ」という第一印象をお持ちでしょうか。実際に、法人営業の第一線で働く営業課長や営業担当者に目的や使い方を一通り説明すると、多くの方がスムーズに書き始めます。お一人での作業だと5,6割くらい埋まります。過去の経緯に通じている営業課長と、1年前から配置換えされた営業担当者とでは知っている情報が違うので、共同作業をすると、さらに記載される情報量が増えます。新技術や新商品などを説明・提案している設計者や生産技術者にこの作業をお願いすると、営業とは違う人間関係や情報を持っているので、さらに深みを増した顧客戦略シートが出来上がります。

経営者の皆さんは「顧客情報が足らない」とよく仰います。しかし実際には、各担当者がそれぞれ持っている情報が1ヵ所にまとまっておらず、幾つかのデータベースに情報が散在していることがよくあります。そして、よく似た情報を集約・昇華し切れず、類似情報が幾つも併存するがために、情報利用者が戸惑っている。そんな問題が横たわっていないでしょうか。

情報の戦略的活用は経営者が関与すべき問題です。顧客情報の積極的な収集、情報の集約と昇華、そして戦略的活用によって、営業活動の質は格段に高まります。

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