調査相手から正しい数字を聞き出せるヒアリング法

日本農業経営大学校で、農家・畜産家の子息や、新たに就農を目指す飲食業経験者に対して、昨年度から二年連続で教鞭をとっています。私が担当する科目は「事業構想」。拙著「事業計画書のつくり方」を教科書にして、事業構想や事業計画のつくり方を習得する科目です。当校の卒業研究は、卒業後に学生が実践する事業の経営計画を作成して発表することです。その準備のために彼らは、関連業界に市場調査をしています。

そんな彼らの反応がすこぶる良い講義内容が、これから説明するヒアリング法です。一部の業界を除けば、顧客の品目別の生産数や業界でのシェアなどをまとめた業界レポートは存在しません。そこで、自ら顧客や市場関係者に訊ねてみることで「当たらずも遠からず」という精度で大体わかります。

経験の浅い調査員がよくやる失敗パターンがあります。「年間に何台生産しておられますか」と台数そのものをストレートに尋ねることです。いくら親密な相手であっても、顧客にとって社外秘情報なので、答えていただけません。

問いかけ方次第です。例えば顧客の年間生産台数が4.2万台だと推測している場合、その推測値より少し多めの台数を挙げて質問してみます。「コストダウンを検討するために将来の生産見込数量を見積もっています。可能な範囲でお教えいただきたいのですが、御社では年間5万台くらい生産しておられますか?」と問い掛けます。お客様が「そんな立派じゃないですよ」と強い否定口調で回答したら、次に「業界上位におられる御社でしたら年4万台はあると思いますが」と再び尋ねると「まあ、そんなもんですよ」と肯定口調で応じられました。この2つの回答から4~5万台の間、おそらく4万台前半だと推定できます。

調査相手から正しい数字を聞き出せるヒアリング法

このように、立場上正確な情報を口外することはできないものの、Yes/Noならお客様も答えやすくなります。顧客にとってもメリットがあることなので協力してあげたい、という気持ちでヒントを出していただけます。大事なポイントは、数字をこちらから出してYes/Noで答えてもらうこと、お客様のメリットを提示することです。

学生がこのヒアリング法に強く興味を示すことから、調査相手から正しい数字や情報を聞き出せずに苦労しているシーンが目に浮かんできます。特に若くて社会経験が少ないので、なおさらです。当コラムを読まれる管理職や士業の方は問題なく訊き出せるでしょうが、若手の方が苦労していないでしょうか。ロールプレイング法と並んで、若手にしっかり習得して頂きたいスキルです。

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