売上見込を可視化すれば売上目標を達成できる

売上見込がわからない状態とは

数十名の営業員と3つの商材別営業部を抱える、ある卸売業者ではかつて、次のような会話が日常茶飯事だったそうです。「今月の売上は目標を達成できそうか」という経営陣の質問に対して、「たぶん大丈夫です」という、営業リーダーの頼りない回答でした。

当事者である営業リーダー自身が、現状どれだけの売上が見込めそうなのか、あとどれだけ増やせば目標を達成できるのか、わからない状態だったのです。車の運転に例えるならば、目的地までの距離がわからず、スピードメーターがない車でドライブしているため、目的地の到着時間が全く読めないようなものです。

弊社が営業力強化コンサルティングの伴走支援を始めて9ヵ月。今では、営業リーダーからは「目標に対してどれだけ足りてないかわかっている。不足に対してどういうやり方で取り組めばよいのか、具体的な挽回策もすでに立てている」と頼もしい言葉が返ってきます。

ステップ1 営業プロセス管理を導入する

当社では、サイボウズ社が提供するkintoneを用いた営業支援システムSFAなど仕組み面の導入に加えて、「これをやろう」「ここのやり方が難しい」「これならどうだ」と営業員どうしが激論を交わしながら、徐々に成長していきました。その過程での主な取り組みをご紹介しましょう。

まず第一に、営業プロセス管理の導入です。実際の営業活動では、営業プロセスと進捗度ランクの関係(下図)のように、営業プロセスを下から上へ1ランクずつランクアップしていきます。「いきなり受注はありえない」のが、商談期間の長い法人営業における鉄則です。この図を参考にして、当社では5段階の営業プロセスを全営業部門で導入しました。

ステップ2 手持ち案件を1ヵ所に集めて可視化する

営業プロセスが決まったら、続いて案件一覧表の作成になります。売上金額、進捗度ランク、売上予定日のような、案件の属性情報を取り決めて、案件一覧表のフォーマットを作成しました。ここまでは難しくないのですが、数百件にのぼる全案件を登録するのが、大変手間のかかる作業です。この作業だけで2ヵ月くらいかかります。

ステップ3 手持ち案件グラフによって不足額を明らかにする

案件管理で大変なのは、案件一覧表を一度作っても、状況が刻々と変わることです。リーダーが営業員と毎週、案件をどうやってランクアップするか作戦会議を行います。営業員が顧客と商談することで、進捗度ランクや売上予定日が変わります。その結果を集計すると、ランク別に手持ち案件グラフができて、目標に対してどれだけ不足しているのか明確になります(下図)。

ここまでくれば、確定受注した案件の金額がいくらあり、目標に対していくら足りないのか、不足金額がわかります。不足金額がわかれば、これからクロージングする案件金額がこれだけあるから、次にどのような行動を起こすべきか、アクションプランを立てられるようになります。

冒頭の「今月の売上は目標を達成できそうか」という経営陣の質問に対して、今では営業リーダーは「今は○百万円不足していますが、残り2週間で○百万円のクロージング活動を行ないますので・・・」と、定量的に答えることができるようになったのです。

その一連の取り組みの結果として、直近の四半期において久しぶりに目標達成しました! 1年以上ぶりだったそうです。ちなみに、次の四半期も目標達成できるペースで進んでいます。

手法を信じて、すぐに、徹底して取り組めるかどうか

今回ご紹介した、ステップ1・2・3の営業力強化手順は、拙著「営業力強化の基本と手法」に詳しく書かれています。

とはいえ、これを実行するのは企業です。今回の成功要因は、当社がこの手法を信じて、すぐに、徹底して取り組んだ「取組姿勢」に尽きます。

一方、弊社が伴走支援している会社の中には、当方が提案しても、即決できず、時間がかかる会社があることも事実です。その会社では、売上は横ばいの状況が続いています。

売上見込を可視化すれば売上目標を達成できるのです。すぐに、徹底して取り組んでみましょう。

具体的な方法は拙著「営業力の基本と手法」に詳しく記載しています。


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