重点顧客と貴社の関係は強いでしょうか

人間関係で成約するケースは多い

商品の機能や価格、サービスの優劣において、以前と比べて企業間の違いが小さくなりました。どれを選んでも及第点以上なので、逆に決めづらくなっています。そこで「人間関係ができているかどうか」が重視されるようになりました。

人間関係を確立できてない営業員は、顧客と面談できていても、購買にかかわる大切な情報を教えてもらえません。敗戦理由を訊くと「土俵に上がれなかった」という回答の多くが該当します。

顧客は大事な案件になるほど、そして高額な案件になるほど、信頼がおける営業員に相談します。なぜならば、法人営業の取引は商品の売買にとどまりません。商品の納入や設置、稼働後のアフターサービス対応がついて回ります。顧客としては、人間関係ができている営業員とやり取りする方がスムーズに進むからです。

顧客のキーパーソンと強い人間関係を築けているか

そこで質問です。重点顧客と貴社の関係は強いでしょうか。

筆者がこのように質問すると、多くの企業経営者はこう回答なさいます。「重点顧客との取引は長く続いていますし、取引額も安定しています」。

それに対して筆者が「経験が浅い若手、あるいは役職定年になったベテランの担当先では、重要な案件について貴社に声がかかっているでしょうか」と問うと、ハッと気づくことが多いようです。

企業どうしの関係と言っても、顧客のキーパーソンと強い人間関係を築けているか、が軸になります。たいがい若手営業員は、厳しいことをあまり言われないシンパ客の担当から始まりますが、「うちは(あの会社の)営業員養成学校みたいなもんだ」という声がちらほら耳に入ります。この声は決して満足しているわけではありません。

人間関係を階層別に見える化する

このように大事な人間関係づくりを、多くの企業では担当者任せになっています。そこで、次の図のように「人間関係の階層別見える化」を行います。

まず、購買決定に関与するキーパーソンを記入した組織図を作ります。次に、当社からの購入に対して、賛成派(当社寄り):○、反対派(他社寄り):×、中立派:△に分けていきます。この図では、購買課長は賛成派だが、その上司である工場長が反対派、社長が中立派であることを意味しています。窓口である購買課長の上司である工場長が他社寄りであれば、当社が重要案件を受注しづらいことが容易に想像できます。

売り手に社長、部課長、担当者の階層があるように、買い手にも階層があります。営業担当者が買い手の社長にアプローチするのは難しいので、当社の社長が会食に誘い、当社のサービス部長が買い手の工場長に説明するなど、同じ分野、同じ階層どうしで複数のラインで人間関係を築くことが大切です。

「言うは易く行うは難し」といいますが、目に見えづらい人間関係を強めていく実行こそ重要です。

【関連図書】
当テーマは、渡邉卓著「図解で早わかり 営業力強化の基本と手法」(アニモ出版)の1-4項(P.22-23)に掲載されています。出版元であるアニモ出版の書籍紹介ページをご紹介します。

目次や1章の内容は、アマゾンの当書籍ページでご覧いただけます。

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