なぜ訪問件数を増やせないのか

筆者が代表を務めている「営業力を科学する売上UP研究会」の月例会では、会員(中小企業診断士)が持ち回りで法人営業事例を発表して、参加者全員で課題や対策について深堀りしています。先日の事例をご紹介します。

業界や製品を伏せてお伝えしますが、商品力がとても強いメーカーの一営業部の事例です。発表者は問題点を4つ挙げて、それぞれの問題に対して、課題、具体的対策を発表しました。4つの問題点のうち1つめについて、発表者の資料から抜粋します。
【問題点】
 若手営業員(2名)の顧客への定期訪問の頻度が少ない
 情報が属人化しており、若手営業員への共有及び承継ができてない
【課題】
 接触頻度を高める方法を確立して案件を増やす
 情報の共有と承継を進め、提案速度を上げて、受注を増やす
【具体的施策】
 接触頻度×提案速度=売上高UP の計算式で、それぞれの要素を改善する。
1)接触頻度の向上施策
 販売強化商品の提案、POP作成、新商品開発、生産地及び工場への同行
 対面、オンライン、TEL、メールでの接触を顧客別に最適化する
2)提案速度の向上施策
 (省略)

当事例のように、若手営業員が経験不足や情報不足のために訪問件数を増やせないことは、多くの会社で問題になっています。発表者の上記説明に対して、参加者から矢継ぎ早に質問が飛んできました。「訪問頻度が少ない原因は?」「訪問ネタ(営業ツール)は揃っていますか?」「あるべき訪問頻度を決めていますか?」「情報がなぜ属人化するのですか?」「営業部長は営業同行していますか?」等々。どれも良い点をついています。上記質問を口火に、その後の討議で(目に見える)問題、そこから「なぜなぜ分析」によって原因1レベル、原因2レベルへ深堀りして、真因を探り出していきました。

若手営業員が顧客を定期訪問できない要因

上図の読み方としては、問題点「定期訪問の頻度が少ない」に対して、原因1レベルで「どの程度の頻度で訪問すべきか決めてない」が挙がりました。原因1レベルから「なぜなぜ分析」でさらに深堀りしていくと、原因2レベルの「お客様の引合発生時期を把握していない」ことがわかりました。例えば、お客様が新商品企画を季節ごとに、4月、7月、10月、1月に決めていれば、その前月の3月、6月、9月、12月に引合いをもらいやすい」ことを把握できてない、という意味です。そこからもう1つの原因2レベル「顧客別に訪問間隔ルールを設定していない」に至ります。ここに書いていませんが、90日間隔の訪問間隔ルールを設定することが対策になります。

図の一番右に挙げた「営業力診断の評価軸」とは、戦略力、計画力、行動力、商談力、管理力という、営業力診断アンケートが掲げる5つの評価軸のことです。当事例で挙げたどの原因も、営業力診断アンケートで測ることができます。

課題や具体的施策を設定する前に「正しい問題認識」が出発点です。問題点を正しく認識できてないと、課題や具体的施策もずれてしまいます。ですから、冒頭に掲げた発表者の課題と具体的施策は、正しい問題認識に沿って再度練り直さないといけません。

【関連記事】
お客様の引合発生時期を把握して、顧客別に訪問間隔ルールを設定することは、法人営業の基本です。訪問間隔や訪問計画の設定の仕方は、下記ブログで詳しく解説しています。

訪問間隔を決めて訪問計画をつくる (ブログ77号 2021年6月27日発行)

関連記事

  1. 包装材料店の売上UPピラミッド例 営業プロセスごとの達成基準の立て方にコツがある
  2. 顧客別に訪問間隔を決める
  3. 新規顧客開拓の営業プロセス 営業プロセスを営業行動へ細分化する
  4. 商品の仕組み3要素 代理店・販売店の生き残り策
  5. 情報発信の仕組みづくり 営業力強化の土台は情報発信の仕組みづくり
  6. 経営戦略と営業方針 会社の営業方針を部下に理解させる
  7. 営業力を科学する売り上げUP研究会イメージ画像 営業プロセスはエース営業マンが知っている
  8. MAを購買プロセスから考える
PAGE TOP