御用聞き営業に対して「もっとこちらから提案していくべき」という論調で、提案営業(ソリューション営業を含む)の重要性が叫ばれます。では、提案営業は御用聞き営業より優れているのでしょうか。
御用聞き営業と提案営業。この2つの営業スタイルに優劣はないと考えています。提案が行われない、または顧客が提案よりも別のものを望む業界が数多くあるからです。
これについて筆者には苦い経験があります。ある消耗品を取り扱う卸売業者に「提案件数を増やしましょう」と投げ掛けたら、事業者がとまどう表情を見せました。いま振り返ってみると、事業者は「先生、当社の業界をわかっておられませんね」と言いたかったのでしょう。そんな恥ずかしい場面にあわないように、事業者の営業スタイル(営業のやり方)を理解することが大切です。
御用聞き営業、提案聞き営業という2つの営業スタイルについて、同友館「企業診断」2025年5月号に当研究会が徹底解説しています。
御用聞き営業と提案営業。この2つの営業スタイルに優劣はありません。それぞれ相性の良い商品・サービス(以下、商品)や顧客タイプ、ライフサイクル(導入期、成長期、成熟期、衰退期)があります。商品の特性から営業スタイルをみると、一般的に下表のようになります。これをもとに事業者の営業スタイルを仮説として捉え、ヒアリングを通じて情報収集しましょう。
購買頻度が高い御用聞き営業では、顧客は1社の仕入先に取引を集中させず、複数社に分散発注する傾向にあります。そうすると、ある品目では「前回はX社(競合企業)で購入したから、今回もX社で購入する」と、顧客が前例を踏襲するケースが大半です。仮に競合他社に発注している商品を当社が受注できれば、「既存顧客内シェアを拡大」でき、当社の売上UPにつながります。
そのためには、自社が見積依頼先の候補として認識してもらうための日常の営業活動が欠かせません。見積依頼先リストに載るためには、定期的な訪問に加えて、自社の技術力や強みを顧客に伝える活動を定期的に行うことが重要になります。自動車部品メーカーを例にとると、自社工場の見学に招く、自社の技術をプレゼンするような活動が効果的です。
提案営業においては、1つ1つの案件を成約することで「市場シェアを拡大」する方策が王道です。個々の案件を成約に導くために、営業プロセスに沿った活動が重要です。一般的な営業プロセスは、訪問・情報提供→提案・プレゼン→見積提示→受注という流れです。着実に各プロセスを上がるために、商談力の強化やスキルアップを図ること、そして、営業プロセスを適切に管理する仕組みを構築することが有効です。
営業スタイルによって売上UPの方向性が大きく異なることから、それぞれが抱える問題にも特徴があります。事業者とのヒアリングでは、この違いを頭に入れて事業者が抱える問題を深掘りしましょう。